石田衣良は、なぜ出版業界に絶望したのか

「小説家と過ごす日曜日」に込めた思い

なぜ新しいウェブメディアを始めるのだろうか(撮影:梅谷秀司)
作家の石田衣良さんが、新しいタイプのメルマガ『小説家と過ごす日曜日』を始めた。7月10日に始まったこの企画は、作家と読者が直接より深くつながるウェブメディアをうたう。コンテンツ企画にも一から携わったという石田さんに、今回の新たな試みに対する思いを聞いた。

 

――企画実現の経緯についてお聞かせください。

今、出版の世界がすごく縮んでいると感じています。実は4〜5年ぐらい前から、「何か新しいことができないか」とあれこれ動いていたんです。たとえば「エブリスタ」という小説サイトと組んで、動画の配信をしてみたりですね。でも、まだもっとできることがあるんじゃないか、出版全体でビジネスの柱になるような新しい事業を探せないか、と模索する中で、今回のお話がありました。

――出版業界の行き詰まりを感じているということですか。

それはすごくありますね。業界の人はもちろんですが、一般の方も肌で感じているんじゃないでしょうか。たとえば大型書店に行っても、入り口に近い、いちばんいい場所が雑貨コーナーになっていることも多いですね。

ところが、毎年、売り上げが悪い悪いと言いながら、意外と出版社の中では危機感がないんです。ひとつはもともと高給取りだというのもありますし、「自分たちにできる仕事はこれだ」という守備範囲が決まっているんです。だから、スマートフォンの市場やネットにいる読者を取り込むかとか、誰も考えていない。だったら自分でやろう、と。メルマガというよりは「ウェブメディア」とか、「ブックトーク」と新しく定義づけたいと思っています。

作家や出版社を支える新しい収益のかたち

出版業界の人は一度外に出て、どうしたら本の世界を元気にできるかを考えながら、いろいろなことに取り組んでみるのがいいと思います。ただ、縮んでいる市場ではみんな後ろ向きになってしまうので、なかなか新しいチャレンジをしにくいんですよね。もし僕がやってみてうまくいったら、多くの作家も後からフォローして来れるかなという気持ちで始めてみました。

本当に大きな夢を言えば、たとえば100人、200人の作家が取り組んで、100億円単位の新しい市場にできないかな、と思っています。それぐらいの規模に育てられれば、ここ15年ぐらい出版の世界ではなかったことなので、大きな変革になりますよね。

次ページなぜ作者は厳しいのか
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
  • 岐路に立つ日本の財政
  • CSR企業総覧
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
レヴォーグ1強に見た和製ワゴンの残念な衰退
ウーバーイーツ配達員の過酷
ウーバーイーツ配達員の過酷
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
飲食業界、失敗する店と成功する店の決定的な差
飲食業界、失敗する店と成功する店の決定的な差
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
統合から20年どこでつまずい<br>たのか みずほ 解けない呪縛

みずほ銀行が相次ぐシステム障害で窮地に陥っています。その根底には、3行統合から今に至るまで解決できていない呪縛と宿痾が。本特集ではみずほが抱える問題点をガバナンス面や営業面などから総ざらい。みずほは立ち直ることができるのでしょうか。

東洋経済education×ICT