石田衣良は、なぜ出版業界に絶望したのか 「小説家と過ごす日曜日」に込めた思い
――企画実現の経緯についてお聞かせください。
今、出版の世界がすごく縮んでいると感じています。実は4〜5年ぐらい前から、「何か新しいことができないか」とあれこれ動いていたんです。たとえば「エブリスタ」という小説サイトと組んで、動画の配信をしてみたりですね。でも、まだもっとできることがあるんじゃないか、出版全体でビジネスの柱になるような新しい事業を探せないか、と模索する中で、今回のお話がありました。
――出版業界の行き詰まりを感じているということですか。
それはすごくありますね。業界の人はもちろんですが、一般の方も肌で感じているんじゃないでしょうか。たとえば大型書店に行っても、入り口に近い、いちばんいい場所が雑貨コーナーになっていることも多いですね。
ところが、毎年、売り上げが悪い悪いと言いながら、意外と出版社の中では危機感がないんです。ひとつはもともと高給取りだというのもありますし、「自分たちにできる仕事はこれだ」という守備範囲が決まっているんです。だから、スマートフォンの市場やネットにいる読者を取り込むかとか、誰も考えていない。だったら自分でやろう、と。メルマガというよりは「ウェブメディア」とか、「ブックトーク」と新しく定義づけたいと思っています。
作家や出版社を支える新しい収益のかたち
出版業界の人は一度外に出て、どうしたら本の世界を元気にできるかを考えながら、いろいろなことに取り組んでみるのがいいと思います。ただ、縮んでいる市場ではみんな後ろ向きになってしまうので、なかなか新しいチャレンジをしにくいんですよね。もし僕がやってみてうまくいったら、多くの作家も後からフォローして来れるかなという気持ちで始めてみました。
本当に大きな夢を言えば、たとえば100人、200人の作家が取り組んで、100億円単位の新しい市場にできないかな、と思っています。それぐらいの規模に育てられれば、ここ15年ぐらい出版の世界ではなかったことなので、大きな変革になりますよね。
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