石田衣良は、なぜ出版業界に絶望したのか

「小説家と過ごす日曜日」に込めた思い

調べてみるとギリシャが国の標語にしているのが「自由か、さもなくば死か」なんです。というのも、近代国家として独立する前は300〜400年イスラム政権下にあったという歴史があります。今回のように、外国人が来ておカネを貸してくれるとか、法律をつくるというのは、全部、ほかの民族のお仕着せだという考えがみんな頭にあるわけです。だから緊縮策にも「俺たち知らないよ」とそっぽを向いちゃうんですね。

そのほか、東洋経済オンラインにふさわしいテーマで言えば、上海の市場に興味があります。ここ3週間で上海の市場が3割暴落しましたが、その影響で、何十人と亡くなっています。中国人は、家などを担保にして資金を借り入れて、実際のおカネを何倍にも増やしたうえで信用取り引きをして株を買っているんです。

だから、株がちょっと落ちると猛烈な量のマイナスになってしまう。上海の高層ビルなんかは、飛び降り自殺防止策で、非常階段のところに鎖をかけたり警備員を置いたりしていますよ。株式を上場したままにしておくと、値段がどんどん下がって行くので、今、市場の3割の株が、取引停止状態になっています。この3週間で390兆円という規模のおカネが消えているんですよ。

「中国はどう考えても戦争なんてできないのに、仮想敵国として中国を考えている人が多い」

――日本についてはどう思いますか。

今の日本人はちょっと不安になっていると感じます。だから強いところに寄りかかりたいんですね。安倍政権のような強いリーダーを求める気持ちであったり、自衛隊問題や愛国心を持とう、という話につながるのかもしれません。いずれにせよ、強がって、こぶしを振り上げているときは、心が弱いときなんです。だから、よく考えたうえで行動したほうがいい。

それから、仮想敵国として中国を考えている人が多いですよね。でも、中国はどう考えても戦争なんてできないんです。友好国もいないし、軍の装備も何十年も遅れています。空母がないから、遠征して展開できない。

日本は、GDPで中国に抜かれたことを大きく見過ぎているんでしょうね。実際の中国を見たほうがいい。年収で言えば100万ぐらい、日本の4分の1で、まだまだ貧しいですよ。一部の富裕層ばかりに目を向ける、というのもやめたほうがいいですね。日本で「爆買い」をしているのは中産階級の人。コツコツ働いて頑張っている、そういう人たちが豊かになって増えていけば、中国ももっと民主化されていくと思います。

情報が出るたびに、振り回されないためには

――情報に振り回されず、冷静な目を養うことが求められていると思います。そのためには、どうしたらいいでしょうか。

大切なことは、大きな世界観を持つことです。「世界はどんなものか」という自分なりの考えをじっくり作る。何年かかかりますが、東洋経済オンラインを見ている若いサラリーマンにはぜひ、挑戦してほしいですね。そのうえで、日々起きている情報をそこに当てはめていけば、情報が出るたびに振り回されるということは、なくなります。

僕自身は、大学の終わりの頃にその必要性を感じました。大学が嫌いでほとんど行かなかったので、1度留年して、5年かけても優が2個しかなかったんです。会社員になるのも無理だと思っていたので、貯金をして株式投資を始めました。相場観を養うのと並行して世界観を作っていったんです。

具体的には、午前中の2~3時間かけて、日経、朝日の2誌の全部に目を通しました。経済なんかでも、わからないものがあったら切り抜いてファイルにして、図書館に行っては、本を調べました。それが後になってすごく役に立ったんですよね。

たとえば上海で株暴落が起きている、となると、中国は資源の消費国としては世界一なので、中国の消費が落ちるなあ、そうなると車とか売れなくなるし、オーストラリアの鉄鉱石とかも相場が落ちるな、と予想がつく。起きたことの事象に対する波及力とか、インパクトみたいなことがわかるようになるんです。

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