「戦力の集中」運用に背いたゆえのミッドウェー敗戦 空母4隻と2隻に分けたことがそもそもの敗因

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第2次反撃も充実する。実戦例では13時31分に魚雷搭載が完了した艦攻10機と護衛の艦戦6機編成の友永隊が発艦する。それも空母3隻分になる。

ただ「ヨークタウン」撃沈後であり、実戦例でも米空母「エンタープライズ」「ホーネット」の2隻は18時10分まで未発見である。攻撃は2隻の空母発見以降となるため当日には実施できるかはわからない。

いずれにせよ、以降の戦いは日本有利となる。空母数は日本3隻、アメリカ2隻である。しかもその頃には米空母艦載機は消耗している。

日本防空戦力の充実から230機中で140機は喪失しているだろう。これは実戦例における海戦終了時の数字である。

残る米空母2隻もおそらくは沈む。アメリカ海軍からすれば撤退時期だが、脱出は難しい。まずアメリカの航空戦力は弱体化している。

また、日本は戦艦部隊に「鳳翔」、上陸船団に「瑞鳳」の2空母があり、別に水上機23機を搭載した水上機母艦「千歳」も無傷だ。そして、戦艦11隻以下による水上戦や上陸戦支援の選択肢も残っている。それからすれば日本海軍も追撃は緩めないからである。

アメリカはそもそも決戦を挑めない

日本は戦力集中の原則に背いたために敗北したのである。逆に戦力を集中運用すれば、敗北は回避できた。情報漏洩や作戦目的が誤っていても、兵装転換のように指揮官判断で失敗しても、偵察機遅延や上空警戒の油断の事故があっても勝利できた。

そもそもアメリカ海軍は決戦は挑めなくなる。日米空母数比は実戦例の4隻対3隻から6隻対3隻に悪化するうえ、うち1隻は修理不充分の「ヨークタウン」である。勝ち目は見えない。

そして負ければ東太平洋も危うくなる。決戦で敗北すれば、空母数の比率はさらに悪化する。そうなるとアメリカ海軍は日本海軍を掣肘できなくなる。日本艦隊は西海岸の沖合に出現しかねなくなる。

それよりも空母3隻の温存を優先する。その存在感で日本艦隊に東太平洋への侵入をためらわせて西海岸のアメリカの制海権を保持する。加えて日本軍外縁部への一撃離脱の繰り返しで日本側の攻勢を押し止める。そのような開戦以来の戦略を継続するだろう。

文谷 数重 軍事ライター

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もんたに すうちょう / Sucho Montani

1973年埼玉県生まれ。1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。ライターとして『軍事研究』、『丸』等に軍事、技術、歴史といった分野で活動

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