若い者たちが騒ぎ立てはじめ
日が高くなってから、あまりあらたまった支度もせずに一行は出かけた。隙間もなく物見車が立ち並んでいるので、一行は華々しく何台も牛車(ぎっしゃ)を連ねたまま、立ち往生する羽目になった。身分の高い女たちの乗った車が多い。身分の低い者のいない場所を選び、そのあたりの車を立ち退(の)かせていると、その中に、少々使い古した網代車(あじろぐるま)があった。牛車の前後に垂れる下簾(したすだれ)も趣味がよく、下簾の端から少し見える乗り手の袖口、裳(も)の裾、汗衫(かざみ)も、着物の色合いがうつくしい。そんなふうに、わざと人目を避けたお忍びであることがはっきりとわかる車が二台ある。
「これはけっして、そんなふうに立ち退かせていいお車ではない」と従者はきっぱりと言い、手を触れさせない。
しかしこの一行も、葵の上の一行も、どちらも若い者たちが酔いすぎて、どうにも止めようがないほど騒ぎ立てはじめる。年配の、分別ある従者たちは、「そんな乱暴はよせ」と止めるが、制しきれるものではない。
















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