「中国バブル崩壊」の本当のリスクとは何か 私が日本株の下落を警戒する「4つの理由」

✎ 1〜 ✎ 58 ✎ 59 ✎ 60 ✎ 最新
拡大
縮小

さて、今回の中国株バブル崩壊が伝染しないのは、このようなメカニズムが存在しないからだ。中国国内の個人投資家が中心になって作ったバブルは、崩壊しても、中国個人投資家の損失にとどまる。この株式バブルが中国不動産バブルから資金の移動によって作られたことでも明らかなように、中国国内の問題なのだ。

したがって、中国株バブル崩壊は日本株式には直接は影響を与えない。普通の暴落伝染メカニズムは働かないのだ。

日本株下落を警戒しなければならない「4つの理由」

それでも、日本株は警戒する必要がある。理由は4つだ。

第1に、ギリシャ経済崩壊とタイミングが重なった。これにより原油も再び大きく下げている。世界全体のリスクをとろうという心理が低下し、世界全体の株が下がる可能性がある。

第2に、日本株は急激に上がりすぎた、ということだ。今年の上昇は、中国株、欧州株が急騰を見せた。そこへ、日本が遅れて、再度上昇した。そして、中国、欧州は崩れた。となると、バブルが崩れるのは日本の番だ、ということになる。米国株は、今年は上がっていない。大きく上がった分、日本株は下落幅が大きくなる可能性が高いということだ。

第3には、ギリシャ、上海が長引けば、米国FEDの金利引き上げと重なる可能性が出てくることだ。しかも、このイベントおよび6月の雇用統計で9月利上げが遠のいた、などと願望による楽観ムードがまた出てきたのが危険だ。

もしFEDが淡々と上げたときには、ショックが生じる可能性がある。ただ、FEDもギリシャ問題は考慮することになるが、ギリシャが長引けば、あまり待ち続けることもできないので、年内利上げがなくなることはないと思われる。つまり年内のどこかでは上がるので、ショックの大きさはタイミング次第とはいえ、必ずその場面は来る。

しかし、もっとも大きいのは第4の理由で、中国の実体経済自体が大きく停滞することだ。見かけ上は、年率で7%成長行くかどうかはともかく、要は5%以上成長しているのだから、成長していることには間違いなく、それほど深刻に受け止めない向きもある。だが、これは危険だ。

成長ステージにある経済においては、スピードは重要で、成長スピードの減速は、経済を混乱に陥れる可能性がある。なぜなら、企業も経済システムも、政府の制度も、高い成長率を前提に回っているからで、減速しただけで、自転車が転倒するように、持続できなくなる可能性がある。

すでにその危険性が高まっている中で、株価が暴落となれば、個人消費は大ダメージを受け、中国実体経済は停滞し、日本への影響も大きくなるだろう。したがって、金融的な危機の伝染、バブル崩壊の連鎖自体は、心配することはないが、実体経済減速による、景気停滞のリスクに対して準備する必要がある。

これが、上海株の本当のリスクだ。

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
TSMC、NVIDIAの追い風受ける日本企業と国策ラピダスの行方
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
【動物研究家】パンク町田に密着し、知られざる一面に迫る
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
広告収入減に株主の圧力増大、テレビ局が直面する生存競争
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
現実味が増す「トランプ再選」、政策や外交に起こりうる変化
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT