「PK戦の勝敗」を分ける"たった8%"の残酷な差 超一流プロも逃れられない「認知バイアス」の罠

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特に、1人目のブラシッチのスピーディーなシュートは、キーパー権田の届かないところに蹴り込んでおり、まさに理想的なシュートだったといえます。2人目のブロゾビッチも、上段の中央という一見大胆な位置に蹴っていますが、統計的にみれば成功期待値の高いコースです。

3人目、4人目の選手も勢いのあるシュートを打っており、4人とも強いキックをしていました。

「外す勇気を持つこと」の大切さ

クロアチア代表はワールドカップでのPK戦の勝率が100%(4/4)と、PK がうまいことで知られています。日本代表に比べると損失回避バイアスにだまされずにシュートすることができていたと考えられます。

行動経済学が勝敗を支配する 世界的アスリートも“つい”やってしまう不合理な選択
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「外す勇気を持つ」という、行動経済学の視点からみて妥当な戦略をしています。

もちろん、PKの成否の要因をすべて損失回避バイアスのせいにすること、また下段に蹴る理由を損失回避バイアスですべて説明できると過信することは、それはそれで言いすぎです。

統計的には、上段と下段での成功率の違いは8%です。

これを大きいと捉えるか小さいと捉えるかは、人それぞれでしょう。

たった8%ではPK戦の勝敗は変わらないかもしれません。ただし、プロ選手が1%でも成功率を高めるために日々技術を磨いていることを考えると、考え方(損失回避バイアス)を見直すだけで8%成功率を上げるのは、かなり大きいのではないでしょうか。

今泉 拓 東京大学大学院学際情報学府博士課程所属、東京スポーツ・レクリエーション専門学校非常勤講師(スポーツ分析)

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いまいずみ たく / Taku Imaizumi

1995年生まれ。東京大学理科2類に入学、教養学部に進学しコンピュータサイエンスを専攻。大学3年生のときに、データスタジアム株式会社で野球データの分析を開始。以降、株式会社ネクストベースにて野球データの分析を担当するなど6年間データ分析に従事。東京大学大学院学際情報学府では、認知科学・行動経済学を専攻。行動経済学とスポーツ分析を掛け合わせたスポーツの発展や技術向上に力を入れている。主な実績に、ARCS IDEATHON(ラグビーの傷病予測コンペティション)優勝、第18回出版甲子園準優勝、スポーツアナリティクスジャパン2022登壇など。

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