ところが、2023年は史上初めて、原油価格が低下する中で経済成長率が改善するという異例の事態が起こった。後述するように、その背景には内需の拡大がある。
対ロシア制裁の内容をみると、ロシアを世界経済から切り離すことが1つの主眼となっているように思われる。
西側諸国による化石燃料などの輸入停止や輸入削減、第三国向け原油に対する上限価格(1バレル60ドル)の設定、軍用品を中心とした幅広い品目の対ロシア輸出規制、国際的な銀行間決済システムSWIFTからのロシア銀行の排除など、さまざま措置が取られている。
また、西側の多国籍企業の撤退も相次いだ。われわれが持つVISAやMasterといったクレジットカードもロシア国内では使えない。逆にロシア国内で発行されたこれらのクレジットカードは、ロシア国内では使えるが国外では使えない。
多くの人は、「これだけのことをしたのだから、さぞかし貿易が減るだろう」と思うはずだ。ところが、ここでも予想は覆された。
世界経済とつながったまま
2022年の貿易総額は8478億ドルで過去最高を記録した。輸出額、貿易黒字額も過去最高で、制裁下で外貨獲得が進むといった逆説的な状況が出現した。
これは、国際エネルギー市場の混乱から原油価格が上昇したことが大きな要因である。それに比べると2023年は貿易額が減少したが、2010年代以降の平均的な水準に戻ったにすぎない。
要は、ロシアは今でも世界経済とつながったままなのである。よく言われるように、中国やトルコ、インドなど、制裁に加わっていない国々との貿易額が増えた。
中国は、もともとロシアにとって最大の貿易相手国であったが、2022年の両国間の貿易額が対前年比3割増の1885億ドルに達した結果、ロシア貿易全体の23%を占めるに至った。
同様に、トルコとの貿易額は倍増してロシアにとって第2位の貿易相手国に、インドは3倍以上に増えて第5位の貿易額となった。2022年は原油価格が高かったこともあり、制裁に参加しているベルギー、イタリア、フランスなどですら対ロシア貿易額が増加した。
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