そもそも対ロシア制裁は、すべての品目の輸出入を禁じているわけではない。2017年に導入された北朝鮮に対する国連決議に基づく制裁と比べれば、参加国や対象品目などの面で、今の対ロシア制裁は相当に緩い制裁である。
アメリカですら当面はロシア産ウランの輸入を継続せざるをえないなど、ロシア経済はさまざまな面で世界経済と深く結びついている。制裁強化の動きは続いているものの、その延長線上でロシア経済を孤立させようとしても、その道のりは見通せないほど長い。
軍事支出は確かに増えているが…
さて、内需の動向に目を転じてみよう。前述の通り、ロシア経済の成長率は、2022年はマイナスで2023年がプラスとなった。
ただし、支出項目別のGDP(国内総生産)成長寄与度をみると、両年とも内需(家計消費、政府消費、総固定資本形成、在庫品増加の合計)はプラスであった。これら内需を支えるのは政府と家計の支出なので、それぞれの状況をみていこう。
ロシア政府は比較的健全な財政運営を続けてきた。コロナ禍への対応で支出が増加した2020年の連邦財政は対GDP比3.8%という、ロシアとしては比較的大きな赤字を計上したが、翌2021年には同0.4%の黒字に戻した。
その後に開始したウクライナ侵攻は、もちろん財政への負担となっている。2022年、2023年と2年連続で連邦財政は赤字(それぞれ対GDP比2.1%、1.9%)となった。2022年の歳出額は対前年比26%もの大幅増であった。
ロシア政府が歳出内訳の公表を取りやめたこともあり、実際に軍事支出がどれだけ増加したのか明確にはわからない。ただし、2024年予算で国防費が対前年比7割増となっていることなどから考えても、軍事支出が大きく増えていることは確実である。
軍需が経済を押し上げている状況は、生産活動にかかる統計データからも推察される。その傾向は2023年にとくに顕著となった。
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