この問題を考えるためには、生産性の上昇を伴う賃上げか否かを判別するための指標が必要だ。
この目的のために、「単位労働コスト(ULC)」を使うことができる。これは、名目雇用者報酬を実質GDPで割ったものだ。すなわち、
これがどのような意味を持つかを、以下に説明しよう。まず、この指標は、次のように変形できる。
この式の分母である「実質GDP÷労働者数」は、労働生産性である。したがって、
――となる。
1人当たりの賃金の上昇が労働生産性の上昇に従って行われる場合には、ULCは不変にとどまる。それに対して、労働生産性の向上を上回る値上げが行われれば、ULCは上昇する。このようにして、賃金の上昇が生産性の上昇を伴うものであるか否かを判別することができる。
企業の方針によって賃金を上げることもできる
技術進歩や資本装備率の上昇がなくても、賃金を上げることができる。その第1は、企業が利益を圧縮させて賃上げを行うことだ。第2は、企業が賃上げ分を売り上げ価格に転嫁して賃上げを行うことである。
GDPから資本減耗引き当てを除いた額は、労働や資本などの生産要素に報酬として支払われるので、次の関係が成立する。
両辺を実質GDPで割ると、左辺はGDPデフレーターの100分の1になる。右辺の第1項は、上で定義したULCだ。第2項は、企業所得を実質GDPで除したものである。これを「単位利益」(UP)と呼ぶ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら