右辺にあるULCが上昇すれば、他の条件が変わらなければ、左辺のGDPデフレーターが上昇する。ただしGDPデフレーターはこの他の要因によっても変動するので、GDPの動向だけからULCの動向を判別することはできない。
結局、次のように3種類の賃上げがあることになる。
(1)生産性向上型賃上げ:資本装備率上昇や技術進歩、新しいビジネスモデルの導入などにより労働生産性が上昇し、これによって可能になる賃上げ。
(2)企業利益負担型賃上げ:生産性の上昇はないが、企業が利益を圧縮することによって行われる賃上げ。
(3)価格転嫁型賃上げ:販売価格を引き上げることによって、労働生産性上昇も企業の利益縮小もなしに、行う賃上げ。
以上をまとめると、図表1のようになる。
「自分で負担する賃上げ」になっている
最近の状況を見ると、実質GDPは、ほとんど不変、ないしマイナス成長である。したがって、このような状況下で名目賃金が上昇すれば、ULCは必ず上昇するので、生産性向上型ではない賃金上昇になる。
企業が利益を減少させなければ、賃上げは販売価格に転嫁され、最終的には消費者物価に転嫁される。結果的に、名目賃金は上がっても実質賃金は上昇せず、実質消費は増大しない。
労働者は賃金の受け取り者であるとともに消費者でもあるから、消費者物価に転嫁することによって行われる賃上げは、「自分で負担する賃上げ」ということになる。
したがって、「自分で負担しない賃上げ」であるためには、価格転嫁ではない方法で賃上げが行われる必要がある。企業が利益を圧縮すればそれが可能だが、このような賃上げは継続することができないだろう。
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