"未踏の父"竹内氏「優れたエンジニア」に必要な事 登大遊・落合陽一を輩出「未踏IT」統括PMの視点

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━━応募してくる人のどこに注目して審査しているんですか?

書類で見るのは、理路整然と物事が書いてあるか、アイデアが面白いか、といったところ。それはまあ当然として、特技や「ITに対して思うところ」といったことも書いてもらっているので、そういうところから人物像を推し量る。でも、書類で見えるものはそう多くないんですよ。

面談だと、会った瞬間に「気合い」が分かるじゃないですか。なかなか言語化が難しいけども。「何かやりそうだな」という感じというか。書類では伝わらない迫力のようなものがある。

━━IT人材の審査にも「気合い」が問われますか。

世の中は広いから、似たテーマをやっている人を探せば、絶対にいないはずがないんですよ。その中でも自分なりの視点で問題を整理できているか、絶対にやり遂げたいというパッションが感じられるか。そういうところを我々は重視していますね。

もちろんパッションだけでもダメで、それを支える技術背景は必要です。時々いるんですよ、パッションはすごいけれども、技術に関しては「これから勉強します!」という人が。それではちょっと頼りない。

ただ、それでは絶対にダメかと言えば、そうとも言い切れないから難しい。例外もいるんでね。大昔の話ですけど、19歳の高専生が応募してきたんです。「将来漫画家になりたい。漫画を描く上で最も手間がかかるのは絵を描くことではなく、コマ割りだ」という。そこを省力化するために、半自動化するというのが彼女のアイデアでした。

彼女にプログラミング歴はほとんどありませんでした。でも、漫画にかけるすごい情熱が伝わってきた。結果的に、9カ月の間にプログラミングをいろいろと学んで、かなりのことをやり遂げました。

━━技術力が足りなくても採択したのは、彼女の情熱が図抜けていたから?

情熱もそうですが、彼女のアイデアには前例がなかったから。みんながこぞって取り組んでいるところは、技術力がなければ勝負にならない。けれども誰もやっていないところであれば、可能性はある。技術力はそこそこでも、パイオニアとしてその領域を切り開くようなことはできる。その兼ね合いで見ていますね。

優れたエンジニアはメタスキルを持っている

━━誰もが知っている未踏ITの修了生としては登大遊さんがいます。登さんの最初の印象は?

登くんの提案書を見た時には「こんなこと、本当にできるのかな?」と思いました。彼が提案してきたのは、TCP/IPの上にイーサケーブルをシミュレーションのように載せるというアイデアだったんだけど、理屈から言えば、そんなことをすれば当然遅くなる。

マイクロソフトなどの大手もなかなかできていないことだったし、そんなことをやっても無駄だという論文もあったくらい。だから私も「本当にできるのかな?」と思っていました。

私としては半信半疑で採択したんですよ。ところが彼はやり遂げてしまった。採択して2、3カ月後にはもう、立派なデモをやってしまった。本当にびっくりしました。

これは後から聞いた話ですけど、彼は高校時代から相当に名前が売れていたらしい。でも、採択の時点ではなかなかそこまでは見抜けないから。書類審査に特技や「ITへの思い」といった項目を設けたのは、そういうわけ。少しでも人柄のような部分が知りたいと思って、いろいろと工夫しているんです。

(写真:桑原美樹)
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