あまつさえ、「米の作り方も知らないとダメだ」と言って、農家ではないのにわざわざ田んぼを借りて、田植えから稲刈りまで「実践」して見せたというからすごい。
「畑もあって野菜も収穫していたし、麦も作っていて、麦踏みとかもやりました。『これはインゲンの茎よ』『これは落花生の葉っぱよ』とか『スイカは実ができたら何日後に収穫するのよ』とか畑の知恵も全部教え込まれました」
食だけではなくて布団の打ち直し、和裁、編み物も仕込まれた。
「生活の知恵から、家庭を営むことの情報をあらゆる形で伝承してくれました」
そんな厳しい祖母が相好を崩して神谷さんをほめてくれるものがあった。
「おにぎりです。『あんたがにぎったおにぎりは美しいね』『おいしいね』と、なぜかいつも私のにぎるおにぎりをほめてくれました。別に何も特別なことはしていなくて普通ににぎっていただけなのですが。
だからそのころから『自分はおにぎりが得意』という勝手な思い込みができてしまったのだと思います(笑)」
高校生になり、お弁当生活になってからはおにぎりだけは自分でにぎって「竹の皮」に包んで持って行っていったという。
「『竹の皮』は通気性がよく、ほんのり香りもいいから、かつての日本では竹の皮におにぎりを包んでいたんですね。それを誰に教わった記憶もないのですが、ラップやアルミホイルではなく、竹の皮を使っていました。
当時からおにぎりをおいしく食べたいという意識が強かったのだと思います」
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