また、パリで活躍している3つ星シェフ、小林圭さんのレストランを2021年に御殿場に、2店舗目を虎屋銀座ビル11階にに開いた。日本人シェフが作るフランス料理のデザートに学ぶところ大と考えてのことだったが、なかなか予約が取れない人気店になっている。虎屋は「老舗なのに新しい」といった感覚が、人々の間に根づいてブランド価値を築いているのは、こういう事実を積み重ねてきた成果と言える。
小豆を世界に広めたい
黒川さんの未来に向かっての夢は、小豆が世界に広がっていくことだという。「日本の小豆の質の良さは世界の中でも例を見ないものであり、虎屋がこだわってきたあんの核心をなす素材でもあります」(黒川さん)。
今のところ、小豆は限られた国でしか食べられていないが、小豆やあんの美味しさを、多くの人に味わってもらいたいと考えている。「カリフォルニアロールが出てきたことで、お寿司が世界に広まっていったように、こうでなければならないという枠組みにとらわれることなく、多様性を寛容に見ていくことが大事だと思っています」。
1980年にパリに進出した時は、羊羹を「黒い石鹸のよう」と言われたこともあり、定着してファンがつくまでには、それなりに時間を要した。小豆を世界へは、さらに高みを目指した目標だが、39歳のリーダーが語る言葉にエールを送りたくなった。
変えてはいけない基軸を守りながら、柔軟性や多様性を持って果敢に挑んでいく。それを続けてきたからこその500年と納得がいく話だった。
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