創業500年「虎屋」が令和にたどり着いた"らしさ" 「TORAYA GINZA」では新たな挑戦も

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もう1つは、フルーツを使った生菓子で、イチゴを主役に据えている。「馨」と名づけられ、淡いピンク色の姿形が愛らしい。新鮮ないちごの風味や奥深い香りを楽しんでもらうため、あくまで“できたて”を味わってもらうことにこだわった。食べてみると、イチゴの瑞々しい香りと風味が口いっぱいに広がる一方、あんこのおいしさがしっかり感じ取れる。こちらは残念ながら期間限定(5月中旬まで)で、四季折々で変わっていく。

期間限定で提供されていた「馨」(写真:虎屋提供)
5月中旬から7月中旬までの期間限定商品「陽の香」(写真:虎屋提供)

しかも、この2種類は、カウンター席に座ると、職人が目の前で作ってくれるという贅沢な体験が味わえる。さらに、パッションフルーツやライムの果汁、山椒など、さまざまな素材を使った「ちぐさかん」という、ひとくちサイズの羊羹を新たに発売した。

通年販売しているちぐさかん(あずき、抹茶、山椒)(写真:虎屋提供)

500年に及ぶ歴史は、「今から未来に向け、どういうお菓子を作り、お客さまに喜んでいただけるか。その積み重ねにあると思うのです」(黒川さん)。「TORAYA GINZA」はチャレンジを行う場ととらえているという。

“今”を大事に判断していくことが肝要

長きにわたってブランドを維持していくには、創業来の基軸を貫きながら、時代の変化にフィットした挑戦が求められる。

「お客さまも、それを取り巻く環境も、日々刻々と変化していくので、その瞬間瞬間の今をとらえ、変えなければならないものを判断しなくてはいけないと思っています」と黒川さん。その際、基準や枠組みにとらわれ過ぎることがあっていけない。

虎屋の中には、代々「変えてはいけないものはない」という考えが根づいているという。つまり、過去の成功体験に則って決めるのではなく、今にとって何が大事なのかを動きながら判断し、やりながら修正して進んでいく。そういうプロセスをとってきたという。「幼い頃から、少しずつ変化しているさまが身近にあったという感覚知みたいなものが影響しているのかもしれません」(黒川さん)。

企業の中で新しいことをやろうとすると「前例がないのに大丈夫なのか」「成功する確率はどれくらいあるのか」など、リスク回避しようとする意見が必ず出てくる。何とか了承をとってやってみて、成功すると「やはりあの時の判断は正しかった」となるし、失敗すると「思った通りダメだったじゃないか」となる。

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