セブン&アイが北米責任者に「年77億円」払う理由 業績連動で膨張、報酬額は井阪社長の22倍に

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デピント氏はアメリカの競合コンビニチェーン首脳を経て、セブン&アイ・ホールディングス発足前の2002年にSEIに入社した。翌年にはバイスプレジデント(副社長)に就任しており、以来20年以上、SEIの陣頭指揮を執ってきた。

SEIはセブン&アイ完全子会社となった2005年には店舗数6000弱、営業利益300億円台と、グループの1事業に過ぎなかったが、2023年度には店舗数1万3122、営業利益4139億円とグループ最大の中核事業となった。その最大の功労者がデピント氏であることは間違いない。

戦略の主柱はM&Aだ。日本のコンビニ市場はトップ3チェーンのシェアが93%を占めるが、北米は首位のSEIを含む上位10チェーンを合わせても全体の2割に満たない。そんな環境でSEIは2005年から2022年まで50件のM&Aを実施。7000店舗以上を取得してきた。

スピードウェイ買収で存在感

中でも象徴的なのは2021年に実施した、当時のアメリカで第3位チェーンであったスピードウェイの買収だ。

日本のセブンーイレブン事業がコロナ影響で低迷する中、スピードウェイを連結化したことで2021年度から全体収益に占める海外コンビニ事業の比率が膨張。2020年度には収益ともに連結業績の3割程度だったSEIは、スピードウェイが初めて通期貢献した2022年度には売り上げにして全体の74%、営業利益の78%を占める規模にまで成長した。

あるグループ中堅幹部は「スピードウェイ買収を機にグローバル(企業)という意識が高まり、(資本市場からの目に)耐えられるようなガバナンス体制や事業構造改革の議論が本格化した」と話す。デピント氏はそんな一大案件の立役者と呼ばれており、別のグループ関係者も「デピントはとにかく優秀」と手放しで評価する。

今回デピント氏の報酬が膨らんだのも、このスピードウェイ買収によりSEIの規模が拡大したことが大きい。さらに2022年度の業績が当初の計画を大きく上回ったことが、同氏のインセンティブを引き上げた。

ただ、すべてが順風満帆というわけではない。今回の査定対象期間からは外れるが、昨2023年度はSEIにとっては逆風の強い1年だった。

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