加藤和彦のいったい何がそんなに凄かったのか 映画「トノバン」に表れる先進と諧謔と洗練

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また、加藤和彦が、当時妻のミカや、高中正義、高橋幸宏、小原礼、後藤次利らと結成したサディスティック・ミカ・バンドの活躍も忘れるわけにはいかない。

特に名盤『黒船』(1974年)のリリースと、イギリス公演を成功させたことは、日本ロック史上における大きなトピックとなっている。

このミカ・バンドについてもポイントとなってくるのは、それほどの巨大な功績があり、また最高のテクニックを誇ったバンドにもかかわらず(アルバム『ライヴ・イン・ロンドン』収録の『塀までひとっとび』は日本ロック史上最高の演奏の1つ)、小難しくマニアックにならず、徹底してポップで軽やかなことである。

だってタイトルからして『サイクリング・ブギ』『タイムマシンにおねがい』、さらには『ファンキーMAHJANG』なのだから。

のちの音楽シーンに多大な影響を残した

これら加藤和彦のキャリア初期における凄みをまとめると、1つは「先進性」だ。ビートルズをリアルタイムでパロディにしたような『帰って来たヨッパライ』から、グラムロックからレゲエまで、こちらも最新の洋楽トレンドを取り入れたサディスティック・ミカ・バンドまで、加藤和彦のセンスはとにかく新しい。

その他でもアコースティック・ギターの奏法や、コードワークや、はたまたPAシステムの導入など、やることなすことが先進的で、その一つひとつが、のちの音楽シーンに多大な影響を残した。

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