共学校にも実社会にも潜む「男子校の亡霊」とは 男子校を潰しても男女平等にはならないワケ

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そこで私は全国すべての男子校に独自のアンケートを採り、どんな性教育やジェンダー教育が行われているのかを尋ねた。すべての男子校といっても、全国の高校に占める割合は約2%で、いまや100校にも満たない。

私立男子校の約半数から返信があったが、国公立の男子校からは返信がなかった。返信があった学校のうち約1/4は、「センシティブなテーマなので具体的な回答は控える」との主旨だった。世間では積極的な性教育には反対の声も強く、注目を浴びたくないという政治的な理由が含まれていると考えられる。

有効な回答は33校。そのなかでも特にユニークな取り組みについては現場を訪ね、拙著『男子校の性教育2.0』にまとめた。

具体的取り組みを知れば、男子校もなかなかやるじゃないかと思うはず。一方で、すでに全国の9割以上の高校が共学なのになぜこの国はこんなにも男女不平等なのだろう? 男子校をなくせばましになるのか? ……という疑問が強まる。

東大合格者に男子校が多い歴史的カラクリ

そもそも、東大合格者数ランキング上位を男子校が占めるのは、歴史的なカラクリのせいであって、そのような学校において東大合格のための特別な教育が行われているわけではない。

1960年代まで、都立の日比谷、西、戸山、新宿、小石川など、公立共学校出身の男子が東大合格ランキング上位を寡占していた。しかし1967年の都の高校入試改革が大失敗し、都立高校が凋落する。

教育行政の失敗という嵐が都立進学校を壊滅させていったあとの荒野に残っていたのが、私立・国立の進学校であり、当時東大入学者のおよそ95%は男子だったので、必然的に男子校が上位に残った。

隕石の衝突によって恐竜が絶滅して、それまで隅っこのほうで暮らしていた哺乳類が栄えた……みたいな話だ。

東大合格ランキング上位を男子中高一貫校が寡占するようになったのは1970年代半ば。当時の学生が社会の指導的地位に立つようになったのは、年齢的に考えて早くても2010年代に入ってから。それ以前は公立共学校出身者がエリート層の圧倒的多数を形成していた。

さらに、首都圏で中学受験ブームが始まったのが1980年代半ば。その結果、私立高校からの進学者数が東大で過半数を形成したのは1990年代に入ってからのこと。その世代は現在まだアラフィフだ。

現在の男女不平等な社会をつくったのが男子中高一貫校出身者であるかのような言い方は、やや無理があるのではないかと思われる。

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