「超円安」終わらない日本が映し出す"暗い未来" 日米の金利差だけで説明できない本当の原因

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したがって、それによるドル売り円買いの圧力は弱いので、経常収支が黒字であっても、日本国内での投資機会に魅力がなければ、日本にドルが流入してこなくなり、なかなか円高にはならないのです。日本国内で経済が活性化しない限り、外国からのドル流入は期待できません。

「失われた30年間」に顕著になった日本経済の低迷

超速・経済学の授業
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1970年代後半から80年代前半にかけて、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた時期がありました。

当時、日本のGDPは世界第2位。世界経済を牽引するアメリカ内でも日本製品は売れていて、アメリカは日本式の働き方(終身雇用など日本型の労働慣行)や、日本式の製造方法(トヨタのかんばん方式と呼ばれる簡単で効率的な生産管理方式)を学ばなければいけない。世界の規範は日本の産業だという羨望の眼差しで見られた時期でした。2010年頃までは、国際的に見ると日本はまだ経済大国でした。

ところが、現在の日本経済は大きく低迷しています。国際的な通貨制度を安定させる取り組みを行う国際機関IMF(国際通貨基金)がありますが、同機関によれば、2023年のGDP(ドル建て)は、日本はドイツに抜かれて第3位から第4位に転落しました。2000年に日本のGDPはドイツの2.5倍あったことを考えれば、いかに日本が凋落しているかがおわかりになるはずです。

経済力が下がれば、その国の通貨の人気は下がり、通貨の価値も下がります。円安の流れが進んだのは「失われた30年間」に顕著になった日本経済の成長の低さも原因のひとつなのです。

(出所)『超速・経済学の授業』
井堀 利宏 東京大学名誉教授

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いほり としひろ

東京大学名誉教授、政策研究大学院大学教授。東京大学大学院経済学研究科元教授。
1952年、岡山県生まれ。東京大学経済学部卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士号取得。東京都立大学経済学部助教授、大阪大学経済学部助教授を経て、1994年、同大学教授。1996年、同大学院経済学研究科教授。1993年、東京大学経済学部助教授。1993年~2015年の22年間、東大の経済学部及び大学院経済学研究科で教鞭をとる。2015年4月より政策研究大学院大学教授。

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