何のための在宅勤務? 震災前から在宅勤務を導入していた先進企業109社を一挙公開!--『CSR企業総覧』注目データ
在宅勤務は柔軟な勤務形態で従業員の能力をフルに活用することが目的だ。うまく機能すれば、居住場所にとらわれずに優秀な人材を日本中、いや世界中から集めることが可能になる。
しかし、ここまで進んでいる企業は一部を除いてほとんどない。今のところ在宅勤務の強いニーズは共働き家庭での子供の病気時や介護などの場合が多い。震災後は「緊急時の事業継続のために在宅勤務を」という意見も増えている。
ほかにも通勤時間が長い人などで1週間に1日でも出社しなくてよければ、精神的に楽になるといったの効果も言われている。
子育て・介護を含めたワーク・ライフ・バランス対応、緊急時対策、そして優秀な人材の活用。こうしたいくつかの目的のために在宅勤務は今後、少しずつ増えていくことが予想される。
ただ、在宅勤務には問題点も数多くある。管理者が部下の時間管理をしにくい。狭い自宅でオフィスのような恵まれた環境は得られない。仕事とプライベートの区別がつきにくい。セキュリティ問題、などが代表例だ。
在宅勤務をしたからといって仕事が減るわけではないことにも注意が必要だ。よくメリットとして挙げられる「子供との触れ合いが多くなる」というのも、極端に通勤時間が長いケースを除くと、普段早く帰宅すれば済む話だ。仕事量が変わらなければ、在宅勤務でもやはり夜遅くまで働く必要があるだろう。プライベートと仕事の区分けがつきにくく、結局、夜中まで仕事をする結果になるだけかもしれない。
在宅勤務をうまく活用するためには、なぜ必要なのか目的をはっきりさせて導入することだ。震災後に多くの企業で進んでいる在宅勤務制度導入は、とりあえずの電力節減が目的となっているケースが多い。
確かに出社する従業員の人数が少なくなり企業の電力消費は減るかもしれないが、共働き世帯などでは家庭の電力消費を増やすことにつながりかねない。「トータルで電力消費は減る」という試算もあるが、前提条件次第で大きく変わる可能性があり、本当に減るかは不透明だ。