嬉野のティーツーリズムに外国人が殺到する理由 栃木も群馬も大失敗、官製富裕層観光の問題点

✎ 1〜 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 56
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

冒頭でいきなり栃木県の恥ずかしい例を挙げてしまいましたが、このほかにも群馬県や宿泊業者が昨年夏に掲げた3泊4日の「リトリート観光」(日常の場所を離れ、仕事や人間関係で疲れた心や体を癒やすのが目的)の申込者がゼロだったりと、「官製の富裕層観光企画」はことごとく失敗しています。私は、行政は人口減少社会への対応など、行政にしかできないことに、もっと注力すべきだと思います。

それでは日本の地方での富裕層観光は難しいのでしょうか。まったくそんなことはありません。

むしろ、日本の可能性は、世界的にも稀にみるような、地方が持っている「長い歴史」や「文化性」にあります。実際、それらを活かして成長する事例が全国で続々と登場してきています。しかも、それは「補助金ありき」などではなく、民間主導による取り組みが多くを占めています。

嬉野温泉の有志が実践する「ティーツーリズム」の真髄

その代表的な事例の1つが佐賀県西部で栽培される「嬉野(うれしの)茶」を核に据えた「ティーツーリズム」でしょう。この地域の独自の取り組みは2016年頃から始まりましたが、年を追うごとに進化を遂げ、世界的にも大きな話題になっています。

嬉野温泉は佐賀駅、佐賀空港、博多駅から約1時間。隣県の長崎空港からだと30分ほどの場所にあります。2022年9月に西九州新幹線の嬉野温泉駅ができたこともあり、周辺を歩いていると、国内の観光客に混じって海外からの富裕層観光客が足繁く訪れているのが本当によくわかります。

では、なぜうれしの茶が特に外国の富裕層から熱い注目を浴びているのでしょうか。その成功の理由をひとことで言えば、もともと地元にあった「500年の歴史を持つうれしの茶」「1300年続く嬉野温泉」「400年の伝統を持つ焼き物(肥前吉田焼)」という3つの要素を組み合わせたことにあります。

「うれしの茶」は芳醇な香りとうま味で定評がありますが、名産地・嬉野に行かないと味わえない「ティーツーリズム」の高付加価値企画化に成功していることです。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事