西鉄貝塚線「都会のレトロ電車」600形の半世紀 開業100年の福岡郊外路線を走る黄色い2両編成

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600形が宮地岳線(貝塚線)に初めて転籍してからすでに30年以上。2007年の一部区間廃止で路線名が貝塚線に変わったことも含め、路線や沿線の姿はこの間に大きく変化した。

貝塚電車営業所長を務める高本さんは1988年に西鉄に入社。宮地岳線時代にも同所で運転士や助役を務め、その後天神大牟田線や本社での勤務などを経て現在の所長に就任し、宮地岳線・貝塚線の変遷を見つめてきた。今ものんびりした雰囲気のある貝塚線だが、かつては「人との接点、関わりがもっと多かった」という。1990年代、西鉄新宮駅に勤務していた際には、「電車で魚を売りに行く行商の方々が売れ残った魚をくれたりとか、世間話をしたりとか。そういう交流があるのがこの路線だったですね」と当時を振り返る。

車両も、600形が主力になる前は昭和20年代製造などの旧型電車が走っていた。1990年に入社し、数年間の大牟田線での勤務を経て多々良工場に配属された小倉さんは、「古い電車は重い部品が使われていて、油を注すところもとても多い。油まみれになりながら仕事をしていて、大牟田線とは全然違う世界でカルチャーショックでした」と話す。

西鉄 貝塚電車営業所長
貝塚電車営業所の高本敬介所長(左)と多々良工場の小倉光博主任(記者撮影)

高本さんにはこんな思い出もある。かつて車内放送の音声をカセットで流していた当時、「実はその声をしばらく担当していたんです」。何時間もかけて駅名案内などの音声を吹き込んだという。自分の声が車内で流れるのは「変な感じ」だったが、今となっては「本当にアナログ的というか、いい思い出ですね」と語る。

貝塚線は今後どう変わる?

のどかな雰囲気を残しつつも変化してきた貝塚線。近年は全国の鉄道混雑率ランキングでも上位に入るほどで、国土交通省が2023年7月に発表した「都市部の路線における最混雑区間の混雑率」(2022年度実績)によると、混雑率は154%と全国で2番目に高かった。

背景にあるのは沿線の都市化だ。「沿線の再開発が進み住宅が増えたことや、貝塚線の駅までバスなどでアクセスできる福岡アイランドシティ(博多湾の人工島)にタワーマンションが建つなどの人口増加が要因」と高本さんはみる。

西鉄新宮駅 600形
西鉄新宮駅に並んだ600形(記者撮影)

黄色い2両編成の600形が走る貝塚線の風景はいつまで続くのか。西鉄が公表している2022年度の「移動等円滑化取組報告書(鉄道車両)」には、「2025~2027年度にかけ貝塚線600形を16両廃車し、車両再生工事を実施した7050形16両を導入する」との文言がある。7050形は天神大牟田線を走る21世紀生まれの車両だ。

節目となる開業100周年の先、貝塚線の姿にも変化が訪れるかもしれない。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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