西鉄貝塚線「都会のレトロ電車」600形の半世紀 開業100年の福岡郊外路線を走る黄色い2両編成

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最大の変化といえるのは「台車」だ。天神大牟田線と貝塚線は線路がつながっていないだけでなく、歴史的な経緯で線路の幅も異なる。天神大牟田線は新幹線などと同じ1435mm幅の標準軌、貝塚線はJR在来線などと同じ1067mmの狭軌。そのままでは走れないため、狭軌の西武鉄道で使っていた台車「FS342」に取り替えている。

西鉄 600形 元西武鉄道の台車
狭軌の貝塚線では元西武鉄道の台車を使用している(記者撮影)

電車の「足」である台車が別物になれば、走りや運転操作にも違いが出そうだ。天神大牟田線と貝塚線の両方で運転経験がある高本さんは、「600形は大牟田線ではブレーキの扱いが難しい電車の1つだったが、こちら(貝塚線)に来てから非常に運転しやすい電車になった」と語る。

高本さんは「貝塚線のほうが低速ということも理由かもしれません」とも話す。貝塚線車両の整備を担う多々良工場主任の小倉光博さんによると、「台車を変えるにあたってモーターは新製している」といい、ブレーキシューも交換しているという。いずれにせよ、貝塚線の600形は運転しやすい電車であることは確かなようだ。

「接点」の多い車両

600形は、装置のブラックボックス化が進んだ近年の電車と比べて「電気接点が多い車両」と小倉さんは言う。接点が多ければ、接触不良などを防ぐためのきめ細かなメンテナンスが欠かせない。調整の難しさもあるが、「自分の手で磨いたり削ったり、油を注したり調整したりできる」車両でもある。小倉さんは、「もう60年くらい使っている車両なのでさまざまなノウハウがあり、若い人たちには『こんな故障が起きたらこうするんだよ』と技術継承しながらやっている」と話す。

西鉄600形 抵抗器
600形の床下に並ぶ抵抗器(記者撮影)

古い機器類は今では交換部品がないケースもある。例えば車内のスピーカーはすでに製造されていないタイプで、故障した場合は天神大牟田線の廃車に付いていた異なる形のスピーカーを外し、取り付け方法などを工夫して設置しているという。「簡単に『ポン』と付け替えできるわけではないので苦労しますね」。表には見えない工夫が長年の活躍を支えている。

西鉄600形 車内のロングシート
赤いロングシートが並ぶ車内(記者撮影)
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