埼玉県西部と池袋を結ぶ東武東上線は、首都圏の通勤輸送の動脈としてはラッシュ時の混雑度が比較的低い路線だ。都心への利用者が途中駅から地下鉄に分散することもあり、2023年度の混雑率は126%と、東京圏の平均値より10ポイント低い。
だが、同線も昭和40年代は定員の倍以上、200%を上回る混雑だった。沿線人口が急増する中、高度成長期から平成にかけての東上線は複線化、車両の増結、そして地下鉄直通と矢継ぎ早に輸送力増強策を講じてきた。
銀の車体にマルーンの帯
そんな右肩上がりの時代に登場してから約40年、ほぼ同じ姿で東上線を走り続けてきた車両がある。銀色のステンレス車体に波状の「コルゲーション」が目立つ「10000型」だ。
10000型が登場したのは1983年。それまで約20年間にわたり、計712両が造られた「8000型」の後継車として開発された。
最大の特徴は、それまで一般的だった鋼鉄製に代わってステンレス製の車体を採用したことだ。この2年前に地下鉄乗り入れ用のステンレス車両9000系が試作的に1本造られていたが、「その後の通勤電車の新しい流れとして本格的に採用したのが10000型」と、車両部車両企画課主任の泉川友彦さんはいう。
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