デビュー時とほぼ同じ姿を残す東上線の10000型は、同線の輸送力増強の経過を示す存在でもある。現在見られる10両編成は、当初8両で登場した編成に後から2両を増結したため、この2両は床の色が異なる。外観はほかの中間車両と見分けがつかないが、車内に入れば一目瞭然だ。
今も第一線で活躍を続けるが、登場から約40年が経過していることもあり、すでにメーカーが製造していない部品も多いという。たとえば制御装置内のスイッチや、車内設備に電力を供給するMG(電動発電機)の部品だ。
このため、リニューアル工事で機器を新型に交換した際の発生品を使ったり、廃車になった車両から取り外したりするなど、予備部品の確保には苦労がある。実は車内の荷棚も「金網の網棚はもう作れるところがない」という。
活躍はいつまで続くか
東武は2024年度の設備投資計画で、東上線の地下鉄乗り入れ用車両9000系を新型車両に置き換える方針を発表した。同形式は10000型とほぼ同時期の製造。とくに東上線の10000型はリニューアル工事を実施していないだけに去就が注目されるが、座席シートの張り替えなどは行っており、美しい状態に保たれている。今後もしばらくは活躍が続きそうだ。
泉川さんは10000型を、「右肩上がりの時代、ラッシュ対策が求められる中で増備された通勤に徹した車両」と評する。登場時からほぼ変わらない姿で走り続ける東上線の10000型は、その当時の雰囲気を今に伝えている。
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