1両の長さ20m、側面には4つの「両開き」の扉――。昭和30年代以降、全国に広がった通勤電車の基本形だ。ラッシュ時のスムーズな乗降と大量輸送に適したスタイルは国鉄・JRや首都圏大手私鉄をはじめ多くの鉄道会社が採用。数多くの名車が生まれ、高度経済成長期の通勤を支えた。
私鉄でその代表格といえるのが、東武鉄道の8000型だ。白い車体に青と水色のラインを巻いた車両といえば、東武線ユーザーなら一度は見たことがあるだろう。初登場は東海道新幹線の開業より前の1963年。その後20年間、1983年まで計712両が造られた。1つの形式としては現在に至るまで私鉄最多の両数を誇る。
大量輸送時代の申し子
長年「東武の顔」だった8000型は、すでに東武スカイツリーラインや東上線の池袋寄りなど都心部の主要区間からは撤退。廃車も進み、2024年11月時点では最盛期の約4分の1まで減った。それでも182両が現役で、東武アーバンパークラインを走る6両編成を筆頭に、今も存在感を示している。
東武鉄道に入社以来この車両に関わり続けてきたという、車両部車両企画課主任の泉川友彦さんは、「お客様が急速に増加し右肩上がりだった時代、とにかく車両を造れ造れ、両数を増やせという中で生まれた車両。ラッシュの申し子ですね」と、大量に製造された時代背景を語る。
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