大谷選手Instaで話題の「南部鉄器」9代目の挑戦 「ものづくりのバトン」を次の時代に渡すために
その影響は、南部鉄器の産地である岩手県の奥州市と盛岡市に大きなインパクトを与え、「及富」の工房も数十年ぶりに活気を取り戻した。
そこに菊地さんと弟が加わり、先祖代々の南部鉄器づくりが次の時代に継承されていくことになったのだ。
結果的に、20代のころ、菊地さんがインターネットショッピング黎明期の広告代理店で働いた経験や携帯電話の販売経験が、家業のECサイトの運営やファンを増やすSNS発信に活かされることになる。
海外の模造品に対抗「越境EC」を開始
もともと「及富」では、菊地さんの曾祖父の代である1954年から輸出に取り組み、ドイツなどでの商談会に参加してきた。しかし、中国での南部鉄器人気を受けて、海外で生産された模造品が急速に広がった。
海外のショッピングサイトには模造品ばかりが並び、商談会では「及富」の隣に明らかな模造品が「NANBU TEKKI」として展示されたこともある。
菊地さんはXで模造品があふれる現状を発信。「世界には本物の南部鉄器を買えないと嘆いている人がいる。彼らに本物を届けたい」という思いを綴ると、賛同した人から協力の申し出があり、クラウドファンディングで約600万円を調達できた。
これを受けて「及富」は鉄器業界ではいち早く、2022年に国際発送が可能な越境ECでの販売をスタートさせた。今では国内ECと越境ECでの売上が、売上の半分以上を占めるまでに成長しているという。
ECだけで見ると、国内と海外の割合は2:1。円安の影響もあって輸出はさらに増加を見込んでいる。その矢先の今回の大谷選手の投稿だったというわけだ。
「SNSから生まれたつながりがあったから越境ECが生まれ、SNSの声が新しい商品の開発にも活きている。これからもものづくりの背景にある物語を伝えていきたい」
そう語る菊地さん。根源にあるのは、ものを作るという人間のいとなみへの敬意なのだという。
「代々続いてきた南部鉄器は、守ってきてくれた人たちのおかげで今があり、それをつないでいくのが自分の使命です」
揺るがない哲学と時代に合わせた流通で、ものづくりのバトンを次の時代につないでいく。
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