大谷選手Instaで話題の「南部鉄器」9代目の挑戦 「ものづくりのバトン」を次の時代に渡すために
2020年に海人さんがこのスワローポットへの思いを伝えた投稿は4万以上の「いいね!」がついた。その反響を知った章さんは、長く封印していた過去の作品への情熱に火が付き、30年ぶりに製造を決意。
2021年には復刻版がグッドデザイン賞を受賞。さらに今年、大谷選手の投稿で騒然となった同じ日には、イタリアの国際的なデザイン賞で銀賞を受賞したというエピソードもある。
日々、国内外に発送する鉄瓶の写真の投稿を続けている菊地さんのSNS運用のモットーは「情報ではなくストーリーを伝える」こと。
若い世代にとっては縁遠いと思われがちな伝統工芸だが、開発秘話や職人たちがその鉄器にむけるこだわりを、自らも職人である菊地さんがシンプルな表現で伝えることで共感を呼んできた。
業界の盛衰と人生をともに
南部鉄器職人の家の長男として生まれ、今では南部鉄器の価値を伝える“伝道師”としてその存在感を発揮している菊地さんだが、この世界に入ったのは意外に遅く、30代になってからだという。
高校卒業後は、飲食店や携帯電話ショップのスタッフ、広告代理店のディレクター、自動車工場の派遣社員など、いくつもの職を転々とし、リーマンショックの後には“派遣切り”も経験。
一時期はほぼひきこもり状態の1年間を過ごした。「南部鉄器を継ぐ家の9代目に生まれながら30歳を過ぎてからも自分探しを長引かせ、迷走していた」と振り返る。
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