成功の秘訣は攻めと守りのCSRを全社体制で行うこと《組織・人を強くするCSR 第2回》
CSRは「攻め」と「守り」をバランスすることが成果につながりやすい。「攻めと守り」という言葉を使わずとも、各社のCSRはそれを意識しているものが多く、「自社ならではのCSR」「基本的なCSR」などの呼び方で自社の活動を規定している。
攻めのCSRとは、その企業だからできる活動、いわゆる“ならでは”活動と呼ばれるものである。積極的に社会課題とかかわることで、自社の事業との接点を見いだしていこうという活動を指す。自社の事業との接点を重視するので、社員の持つ経験やノウハウを存分に活用して社会的な成果につなげることが眼目だ。
前回、「思わず人にしゃべりたくなる活動こそが社員活性化につながる」と指摘したのは、この攻めのCSRに属することである。
一方で、守りのCSRとはリスクマネジメントの観点から、やっていないと経営にマイナスになる活動を指す。コンプライアンスや人権対応、広く言えば雇用や納税なども守りのCSRである。
組織活性化の観点からみると、攻めと守りはハーズバーグの“動機づけ要因と衛生要因”と似たところがある。動機づけ要因はあると働く満足度が上がり、なくても不満とはならない。しかし、衛生要因はないと満足度が下がってしまうというものだ(図参照)。
CSRでは、動機づけ要因にあたる「攻めのCSR」が少ないと社員の誇りや働きがい、社員のCSRそのものに対する認知が上がらない。一方、衛生要因に当たる「守りのCSR」をおろそかにすると、企業の経営リスクが上がり、不祥事が発生する確率が上がってしまう。企業においては攻めと守りのいずれも充実していく必要がある。