成功の秘訣は攻めと守りのCSRを全社体制で行うこと《組織・人を強くするCSR 第2回》
たとえば、現地で雇った従業員がカネ欲しさに日本人管理職に見つからないように1週間飲まず食わずで働き続け、その後、職場で倒れてしまったというケースが起きたとしよう。これは現地のNPOから「日本企業の〇〇は現地従業員を酷使し、わが国で搾取をしようとしている」と実名入りで告発される可能性がある。
こうしたときにマネジメントはどのように対応すればよいか。海外展開をするにはこうした日本国内ではほとんど起きないような状況を検討し、その訓練をしていかなければ、「守りのCSR」すら維持することができなくなるのである。
CSRはCSR部門だけの課題ではない
これらはCSRという枠組みの中で語るには、いささか小さすぎるかもしれない。グローバル化が猛烈に進む中で、現地社員の雇用の際にグローバルで通用する人権・労働慣行についてしっかり勉強しておく必要があるだろう。
しかし、これはリスクマネジメントの一環でもあり、対応すべきは人事部門、労務部門、コンプライアンス部門、調達部門と多岐にわたる。
社員のやりがい、働きがいにつなげる「攻めのCSR」でも同様だ。たとえば、ある社員が「自社のノウハウを使って、新興国の社会課題を解決したい」と考えたとしよう。
実現するためには企業の地域戦略と融合して、地域政策や地域住民、NPO/NGOとの接点も出るだろう。これらは長期の市場展開戦略であり、マーケティング部門、経営戦略部門、事業部門が関係するなど全社で取り組むべき活動となる。
このように守りのCSR、攻めのCSRいずれもトップは「CSR部門がやっていればよい」という観念を捨てる必要がある。「関係部署が密接にかかわりあいながら全社一体で目標の達成を目指す」。これが、CSR活動を成功するための必須条件と企業は考えるべきなのである。
(この連載はクレイグ・コンサルティングのコンサルタントが執筆します)
株式会社クレイグ・コンサルティング
2004年設立。ISO26000対応などのCSRコンサルティングを中心に、経営戦略、M&A、事業再生、人事コンサルティングなど幅広い分野でのコンサルティングを手掛ける。 http://www.craig.co.jp/
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