成功の秘訣は攻めと守りのCSRを全社体制で行うこと《組織・人を強くするCSR 第2回》
グローバル化が進み、守りのCSRも新たな対応が必要に
続いて守りのCSRだが、一般的に日本企業は国内では高いレベルで実現できている。大企業だけでなく、中小企業も高いレベルの“守り”ができていなければ大手との取引ができないため、必須の取り組みとして行われていることが少なくない。
だが、グローバル化が進む中、海外では国内よりも広い「守りのCSR」が求められ、これにどのように対応していくかが課題となっている。これらの点はCSRの初の国際規格であるISO26000に詳しい。ISO26000には7つの中核主題と呼ばれる“守り”の一覧がある。この中で特に日本企業がグローバルで弱いとされるのは「人権・労働慣行」である。
日本国内で人権問題と言えば、同和問題かセクハラ・パワハラの範囲だが、世界では社会的弱者の定義は極めて広く、これらがグローバル企業を中心に大小さまざまな問題を発生させている。
過去に大きな問題となったケースとして、スポーツメーカーのナイキ社が児童労働でNPOに攻撃された「ナイキショック」がある。1990年代半ばにナイキのアジアの下請け工場が児童を安価な労働力として活用し、学校に通わせずに工場で働かせた点が批判を呼び、NPOや学生の不買運動、工場ストが相次ぎ、ナイキ社は大損害を被った。
先進国では考えにくい児童労働が、発展途上国では頻発していることなど自国での常識が通用しないことが少なくない。グローバルに展開する企業は異なる価値観を受け入れてビジネス展開していくことが避けられないのだ。
海外展開が猛烈な勢いで進み、現地の雇用も増え続けている日本企業にもこれらは当然当てはまる。しかし、筆者はこうした異文化の中で人権や労働慣行に正面から向き合う日本企業はまだ少ないと感じている。
このナイキの児童労働は一例であり、日本企業が気をつけなければいけないことはさらに多方面にわたる。しかし、一般的に現地でマネジメントを行う日本人はこうした課題対処に慣れていない。