「結婚適齢期は50代」ということもある! ある国家公務員男性の「遅れてきた春」

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お互いに独身生活が長かったため、共同生活が負担にならないのか不安だった。暮らし始めてみると不思議なほど気を遣わない。毎日、おいしい手作り弁当を持たせてくれるのが何よりうれしい。

「お互いに食べることが好きで、牛丼屋でも高級レストランでも一緒に入れます。食べものの好き嫌いがないことは助かりますね。日々のことだから、食事はすごく重要ですよ」

すりあわせられる程度の不満

結婚して悪かったこと、と言えば大げさだが、不満もある。幸一さんは「自分の時間がなくなった」と実感している。新居がまだ整っていないこともあり土日は買い物でつぶれてしまう。平日の夜、由里子さんはバラエティ番組を見るのが好きだが、幸一さんは録画したスポーツ番組が見たい。

この程度の不満であれば、半年も経てばすり合わせができると思う。ちなみに筆者は独身時代にテレビを見る習慣はなかったが、バラエティもスポーツ番組も好きな妻の影響で、今では毎日のようにテレビを見るようになった。ただし、食事中だけはテレビを消したい。この点に関しては妻が我慢し、今では慣れてくれた。

ほかにも不安な点がある。実家の親きょうだいと由里子さんの関係だ。由里子さんは早くに両親を亡くしている。幸一さんの母親やきょうだいとしては、由里子さんはどんな人なのかを知るためには、口下手な幸一さんではなく由里子さんに直接質問したいところだ。都会の人とは違って、田舎流の露骨な聞き方をしてしまうこともあるかもしれない。由里子さんとしては、素性を探られているようでいい気持ちはしないだろう。

「私は経歴なんかはどうでもいいのですが、母親としては親同士で話せない分だけ心配なのだと思います。今さら妻の家柄や職歴を値踏みしたいわけではなく、とにかく何でも聞くことで安心したいだけのようです」

結婚は2人だけの関係に留まらず、それぞれの家族ともそれなりに仲良くやっていくことを意味している。幸一さんは由里子さんをかばう義務があるが、由里子さんも幸一さんの家族から受け入れられる努力をしなければならない。

もちろん、前提となるのは2人の結びつきだ。幸一さんは今後、由里子さんを誘って旅行に出かけたいという。まずは国内旅行をし、生活が落ち着いたら海外を旅する。2人とも旅好きであるため、食事のとき以上に「この人と一緒になって良かった。楽だな」と感じるかもしれない。1年後には、幸一さんと由里子さんは長年連れ添った夫婦のように馴染んでいる気がする。

取材協力:東京世話焼きおばさんの縁結び
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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