経団連が「街コン推進」…余計なお世話だ! <動画>少子化対策ならほかにやることが

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「人口減少への対応は待ったなし」――。そんなタイトルが付された、経団連の「総人口1億人維持に向けて」という提言書。雇用形態の多様化など、経団連としてすぐに取り組むべき問題が多数示されていますが、中には夏野剛氏が「余計なお世話!」と、思わず突っ込んでしまう内容も……。

 

経団連は皆さんご存知の通り、日本の企業が組織する財界の団体としていちばん影響力の大きいものです。この経団連が人口減少の問題について発言するというのは、非常に重要なことだと思います。

まず「雇用の多様化を進めていく」ということが提言されていて、この部分は非常にいいと思います。今、日本企業は雇用の多様化がまったくできていません。正社員か非正規社員か。これは一律的すぎます。

年功序列、終身雇用、そして新卒一括採用。これら20世紀型の雇用システムをかたくなに守り続けることでどんどん競争力を失っていったのが、ここ20年の日本だと思います。今回の提言には、あまり明確ではありませんが、このままではいけないと書かれています。

自分たち自身の問題に集中しろ!

この記事は週刊『夏野総研』とのコラボレーションでお届けします

僕個人としては、正規雇用にこだわり続ける必要はないと思っています。むしろ社会全体で人材の流動化を吸収できるプラットフォームを用意するほうが大事。ひとつの企業に30年、35年勤める時代は、そもそもひとつの企業がそんなに持ちこたえる時代じゃないので、もう難しいでしょう。

ここについてはまさに経団連自身の問題なので、ぜひ頑張ってほしいのですが、もうひとつ、「街コンを推進する」みたいな話が盛り込まれていますね。少子化の打開には男女の出会いが重要で、だから街コンを推進すると。これは正直、大きなお世話ですよね。

そもそも「男女の出会いの少なさ」は、晩婚化、少子化の主因でしょうか? むしろ経団連のような企業群が50代、60代、あるいは40代以降の社員を大事にしすぎて、若者の雇用を止めたり、若者の替わりに派遣社員を使ったりするから、20代の給料が低くて結婚をためらう、子作りもためらう。こっちのほうが主因に決まっているじゃないですか。

少子化も晩婚化も、自分たちが加担して出てきた問題であるのに、街コンの推進なんかで解決しようって……。そんなのは「昭和の発想」ですよ。

街コンなんて、経団連が頑張らなくても勝手に推進されていますし、街コン以外にも男女の出会いの場は山ほどある。LINEというサービスが出て、どれだけ出会いのハードルが下がっていることか。

そういったものをみんな自由に使いこなしている時代なのですから、経団連さんは余計なことを言わず、自分の問題に集中してほしいものです。

夏野 剛 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授

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なつの・たけし

早稲田大学政治経済学部卒業、東京ガス入社。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒(経営学修士)。NTTドコモでiモードの立ち上げに参画。執行役員マルチメディアサービス部長を務め、08年に退社。現在は慶應義塾大学政策メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、ぴあ、トランスコスモス、DLE、GREEの取締役を兼任。経産省所轄の未踏IT人材発掘・育成事業の統括プロジェクトマネージャー現任。ダボス会議で知られるWorld Economic Forum の“Global Agenda Council”メンバーでもある。


 

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