「モノ言う株主」米名門百貨店の破綻招いた大誤算 長期的な目線で「企業価値の向上」を目指すべき
J.C. Pennyは1902年創業の大手百貨店チェーンであり、全盛期の1970年代には店舗数2000を超える規模まで成長した。1980年代に入りウォルマートやターゲットといったより低バジェットの顧客を対象とした競合との競争が激化し、徐々にその影響力を失っていった。
そのような状況で、ビル・アックマンは2010年にJ.C. Pennyの株を全体の17%取得する決断を行なった。彼は、J.C. Pennyが持っている広く認知されたブランド力と、所有する店舗の立地の良さに目を付け、オペレーションの改善、コスト削減、ノンコア資産の売却などを通じて業績を大幅に改善できると考えたのだ。
ビル・アックマンは最初の仕事としてCEOを変更した。
新たなCEOとしてApple社でシニア・バイス・プレジデントをしていたロン・ジョンソンを指名した。彼はApple社においてAppleストアを立ち上げた人物として知られていた。
ロン・ジョンソンは、J.C. Pennyの伝統的な価格戦略を大きく変更しようとした。J.C. Pennyは通常の店頭価格から、セールやクーポンを利用することによって顧客が大幅なディスカウントを得ることができる仕組みを採用しており、その大幅なディスカウントが顧客の求めるJ.C. Pennyのブランドとなっていた。
ロン・ジョンソンはその仕組みを変更し、店頭価格からのディスカウントを中止した。これは、Apple社で働いていた過去の成功体験から、「ディスカウントをしなくても良いものは売れる」というポリシーを持ち込んだためである。
株価が暴落し、ついには「経営破綻」の憂き目に
しかし、J.C. Pennyで売られる商品はApple製品のようにブランド価値が高いわけではなかったため、売上は低迷し、2012年第4四半期には過去最低の売上を記録してしまう。同時に、低迷する売上から利益を守るために大規模な従業員の解雇も行なった。
ビル・アックマンとロン・ジョンソンが行なおうとした改革は、結果として裏目となり、長期的な企業価値を大きく棄損する結果となってしまった。
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