「ざま見やがれ」強気な建築家・前川國男の驚く偉業 コンペに落ちた若手が「巨匠」と呼ばれるまで

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近代建築の巨匠・前川國男が手がけた東京都美術館(写真:いお/PIXTA)
「前川國男」といえば、日本を代表する建築家の一人です。「打ち込みタイル」という工法を生み出したことでも知られており、日本の建築界に多大なる影響を与えました。モダニズム建築の巨匠・前川とはどのような人物だったのか。新著『教養としての西洋建築』を上梓した建築家であり国士舘大学名誉教授の国広ジョージ氏が、前川の建築家人生について解説します。

日本の建築史に名を残した伊東忠太

日本におけるモダニズム建築の歴史を振り返っておきましょう。モダニズムと保守派の対立は、しばしばコンペの場で顕在化します。アドルフ・ロースが強烈な皮肉でゴシック様式に抵抗したシカゴ・トリビューン本社ビルもそうでしたし、ル・コルビュジェを排除した国際連盟本部ビルもそうでした。

じつは日本でも、1930年(昭和5年)にそれと同じような「事件」が起きています。募集されたのは、関東大震災で被害を受けた「東京帝室博物館本館」(現在の東京国立博物館本館)の建て直し計画案。コンペを主催した宮内省は、募集規定で「日本趣味を基調とする東洋式とすること」としていました。

このコンペの審査員長は、伊東忠太です。日本の建築界で「西洋建築を学ぶだけでいいのか」という機運が生じたときに、日本建築のルーツはギリシャ建築だと主張する「法隆寺建築論」を書いた人物。その後、伊東は日本や東洋の建築史を体系的に研究しました。

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