「ざま見やがれ」強気な建築家・前川國男の驚く偉業 コンペに落ちた若手が「巨匠」と呼ばれるまで
たとえば、モダニズム建築でよく使われるコンクリートの打ちっ放し。これを日本でやろうとすると、昔の技術では、凍結してヒビが入ってしまったり、中から破裂したりするおそれがありました。
そこで1960年代以降の前川は、外壁にタイルを貼るようになります。その作業を効率よく行うために「打ち込みタイル」という工法も開発しました。ふつう、外装タイルはコンクリートを打った後に最後の仕上げとして貼りつけます。
それに対して、コンクリートを流し込む型枠に最初からタイルを組み込んでおくのが「打ち込みタイル」。工程が短縮されるだけでなく、外壁の耐久性も高まりました。仕上がりも美しくなります。
長い時を経て完成した日本独自の近代建築
先ほど紹介した東京文化会館は基本的にコンクリート打ちっ放しですが、一部にはこの工法で貼られたタイルが使われました。その14年後に建てられた東京都美術館は、ほぼ全面的に「打ち込みタイル」。
レンガを積み上げたように見えますが、本物のレンガはごく一部で、ほとんどはタイルです。外壁をタイルで飾るのは、ル・コルビュジェ流のモダニズム建築とはかなり違うものだといえるでしょう。
「日本趣味」を押しつけるコンペ規定に反発したときの若き前川國男だったら、そんな外壁は考えなかったかもしれません。
しかし彼は長いキャリアの中で、日本独自の近代建築とは何かを考え続けました。日本のモダニズム建築のパイオニアだったからこそ、そういう問題意識を背負い続けたのだろうと思います。
そして、打ち込みタイルという工法にたどり着いた。上野公園に行ったら、帝冠様式とモダニズムを見比べるだけでなく、ル・コルビュジェと前川のモダニズムの違いもぜひ見比べてみてください。
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