シングル化を招く「柔軟性のない結婚と家族制度」 地方圏で根深く続く「伝統的結婚慣習や家意識」
このように、シングルの親密圏には、親やきょうだいの存在が西洋諸国より大きい。このように、結婚の柔軟化・多様化が進みにくく、親密圏が制度的家族を超えて広がりにくいことが、非婚者の増加をもたらしているのだろう。
また、家族に代わる多様な住まい方(コレクティブハウス、シェアハウスなど)も発達しにくく、未婚者、離婚者、ひとり親の多様な居住スタイルが発達していないことも、シングルの孤立化を招きやすい。これも家族中心文化と関係しているはずである。
1960〜70年代生まれ以降のミドル期世代は、結婚したら親と同居しなくなり、直系家族制規範に基づく家族形成をしなくなった人々である。しかし核家族に代わる新たな家族形成規範は生まれなかった。結婚をせずにシングルの道を歩んでいるのはその帰結だろう。その結果、非家族的親密圏も中間圏も広く形成されている状態にはなく、シングルは孤立するリスクを抱えている。
西洋諸国の多様化する親密圏
西洋諸国では、1960年代後半から離婚へのスティグマがなくなり同棲も広がった。やがて、事実婚、同性婚、国際結婚、移民結婚など、個人が選択して作る親密なパートナー関係を国家が承認・保護するという道筋で親密圏が拡大してきた。ステップファミリーやひとり親家庭等も、家族の一形態として市民権を与えられ、公的支援が得られやすくなっている。
多様な結婚やパートナー関係に対して、結婚と同等の法的権利と福祉サービスを国家が提供し、家族の多様性が社会的に承認され、社会的差別や排除の理由にならなくなってきた。
多様な家族を容認する社会を維持するためには、子育てや、教育費や、家事支援、女性の就労支援など、家族に対する公的・社会的支援の充実が進んだ。
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