シングル化を招く「柔軟性のない結婚と家族制度」 地方圏で根深く続く「伝統的結婚慣習や家意識」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

日本では身寄りのない高齢者が急増し、身内に代わる支援やケアをめぐって深刻な問題が各地で発生している。入院にも手術にも金銭の引き出しにも、また亡くなった後の整理にも、第三者は有効な手出しができない状態にある。家族を前提とした社会制度が社会の急激な変動に対応できなくなっているのである。

今後、増加するミドル期シングルが高齢期に突入すれば、今以上に機能マヒを起こすことは火を見るより明らかである。家族を前提としない社会制度と環境づくりに早急に手をつけなければならない。

安心して暮らしていくための新しいコミュニティ

それと並んで、シングル社会に対応する新しいすまいとコミュニティの力によって孤立・孤独を防ぎ、家族が果たしてきた生活機能を代替する必要がある。

たとえば現在のような、孤立した住宅(多くが狭小住宅)ではなく、コレクティブハウスやシェアハウスなど、プライバシーを確保しながら共同生活のメリットを生かしたすまいを増やしていくなど、すまいの多様化を進めることだ。

これらは、異なる世代、異なるタイプの世帯の混住であることも重要な条件である。これらのすまいを含む地域には、くらしに必要な社会資源が配置されることも条件となる。とくにコミュニティキッチン、フリースペース、コワーキングスペースなど、コミュニティのゆるやかな関係づくりに役立つ空間を含み、孤立・孤独に陥ることなく、家族がなくても安心して暮らしていけるようなコミュニティである。

そうすれば、ひとり暮らしなど小規模世帯が多数を占める状況や、ひとり親世帯、高齢の親と子の世帯、共働きの子育て世帯、障害や病気の家族がいる世帯などが、どのような状況下におかれても安心して暮らすことが可能になるだろう。

この記事の画像を見る(1枚)
宮本 みち子 放送大学名誉教授、千葉大学名誉教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みやもと みちこ / Michiko Miyamoto

1947年、長野県生まれ。東京教育大学文学部経済学専攻卒業、同社会学専攻卒業。お茶の水女子大学大学院家政学研究科修士課程修了。博士(社会学)。専門は、生活保障論、若者政策論、家族社会研究。労働政策審議会、社会保障審議会、中央教育審議会委員等を歴任。著書に『若者が無縁化する』(筑摩書房)、『地方に生きる若者たち』(共編、旬報社)、『下層化する女性たち』(共編著、勁草書房)、『人口減少社会の構想』(共編著、放送大学教育振興会)、『アンダークラス化する若者たち』(共編著、明石書店)、『若者の権利と若者政策』(編著、明石書店)などがある。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事