「東京ミドル期シングル」とはどんな人たちなのか 「地縁血縁」を嫌ってきた人たちと「孤立化」
人口構造は裏切らない
地形とか気候のようなもので、それは容易に変わることがないし、他の社会経済的条件を否が応でも決定づけてしまう。というよりも、ふだん目にする経済やビジネス、社会現象はおしなべてその副産物に過ぎない。
わりとここまではよく聞く話である。もちろん人口構造の話だ。
この本が対象とするのは、さらにその奥である。統計やデータブックでは目にするけれどなかなか実感の難しい、「生きた人口論」が展開されている。
「東京ミドル期シングル」
なんとなくきらめいた語感だ。バブル期のトレンディ・ドラマの登場人物が30有余年を経て蘇ったかのように。アーバンライフを嗜む往年の美男美女たちはどうなったのか――。こんなふうに読んでみるとまた違った味わいがある。
それはさておいても、思いのほか戦慄させられる。
何より周囲を一瞥しても、「東京ミドル期シングル」はありふれた日常になっている。ピーター・ドラッカーはそのような現象を「すでに起こった未来」と呼んだ。すでに起こっていることなのだから、それ以上あてになるものはない。
論調は控えめである。いや、相当に謙虚と言ってよい。大胆な未来展望とか、現状の解釈を積極的に行ってはいない。そうしたいと願っているようにも見えない。平明でドライで、客観的なファクトをこつこつと積み上げていく。探究姿勢には焦りがなく、学問的というにはホットで、評論というにはクールだ。
しかし、予期される帰趨は「ぬるく」も「控えめ」でもない。
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