「東京ミドル期シングル」とはどんな人たちなのか 「地縁血縁」を嫌ってきた人たちと「孤立化」
かえって淡々とした文体が、静かなうねりのようなものを正確に抉り出している。世には多くの「危機好き」がいる。そういう人々が気楽に観念としか戯れられないのと反対に、正直、かつ率直、簡明に現実を語るのはやはり学者ならではの見事な仕事だ。
まずは現状を曇りなき目で見ること。そして、読み手それぞれの問題意識から、それぞれの場に持ち帰り、できることを行っていくこと。多くの思考の選択肢をもってほしいと著者たちは望んでいるように見える。
狂いのない現実
そもそも「東京ミドル期シングル」とはどんな人たちなのか。東京区部、すなわち23区に居住する独身の男女を指している。年齢は35歳から64歳。若いほど高学歴、地方圏・東京圏郊外出身者が少なくない。職業を持ち、自活している。そして、これが何より重要なことだが、東京区部の3割近くを占めている。
こうして見ると、Netflixなどで目にするドラマの主人公に多い設定である。特に近年見る「ソロ活」を好むプロフィールとぴたりと当てはまっているのは、このようなライフスタイルがごくありふれた存在になっているためなのだろう。
繰り返すが、一般論としての人口論が、どちらかというと食品サンプルのような情味を欠いたものとすれば、「東京ミドル期シングル」というと十分に生きた人間の生態を取り扱っているように見えてくる。
強く認められる問題意識がそこにある。「役割のないシングル」をどのようにして社会に再び編入するかという問題である。たとえば次のような記述がある。
「将来的に家族を持たず、社会的に孤立しやすいミドル期シングルのさらなる増加は確実であり、その一部は非正規雇用による不安定な経済状況に置かれ、新たなアンダークラスを形成する可能性があります」(『東京ミドル期シングルの衝撃』98頁)
気になるところはいろいろある。特に性別である。性別に言及すること自体があまり上品でないとされる昨今だが、事実ならばやむをえない。ちょっと引用してみると、次のような感じである。
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