シングル化を招く「柔軟性のない結婚と家族制度」 地方圏で根深く続く「伝統的結婚慣習や家意識」
共に暮らす家族がいないシングルの増加は、この国で家族というものがドラスティックに変容していることを象徴している。その意味を考えてみよう。シングルは、長期にわたってすべてのニーズを自力で充足することができるだろうか。それを親密圏という用語でみてみよう。
親密圏とは、具体的な他者との間の、関心と配慮によって結びつく持続的な関係性を指す用語である。親密圏は心の拠り所である。また、人と人とをつなぐ関係性が「他者の生命・身体への配慮」で成り立ち、相互に支え合うことができる関係である。家族は親密圏の核となるものだがこれに限られるものではない。状況によっては、親しい友人・知人なども親密圏になりうる。しかしその例は今のところ多くない。
親密圏は、継続的な性的関係の単位、生殖単位、子育て単位、生活単位、家事や介護等の無償のケア単位、親密な感情でつながる単位である。近代では、これらの単位は結婚した夫婦が形成する家族とイコールか擬制だった。そして法制度は、このことを前提として人々の生活の再生産を枠づけてきた。
ところが、ミドル期シングルの大半は、日常においてこれらの親密圏をもっていないことになる。ただし、同居していない親やきょうだいあるいは別居パートナーが、シングルにとって親密圏として機能している実態がある。ミドル期シングルは特に親と親密な関係を維持し、心の支えとなり、困った時には頼れる大切な人になっている。このような親密圏はシングル女性が築いているもので、男性には薄い傾向がある。
結婚に対する女性の忌避の感情
結婚や出産に関する社会的規範(圧力)が緩み、結婚するかしないか、子どもを持つか持たないかを個々人が自由に選択することがかなり許容されるようになった。
しかし現実には、結婚や出産をするかしないかを選択できる層と、やむをえずに結婚や出産をしない層に分かれてきている。男性と変わらない就業状態にある女性たちは、結婚・出産によって多くの機会を失いかねない。若い女性たちはジレンマを抱え、決心できないままシングルを続けている。
しかし、シングルを続ける女性たちの中には、将来の経済的不安を抱えている人が少なくない。現行の結婚に対する忌避の念は、結婚している女性たちの間にさえかなりみられるものである。2021年に朝日新聞社が実施した「夫婦別姓に関する聞き取り調査」は、結婚に係る古い意識や慣習が根強く残っていて女性を苦しめている地方圏の実態を鮮明に示している。
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