私もかつてサラリーマンだった当時を振り返ると、オフィスはある程度きれいで通勤の便さえ良ければ、別に自社ビルでも賃貸でもよかった。周囲の同僚たちもそうだったと思います。
それより問題なのは、自社ビルにお金をかけることで、どれだけ企業価値が向上するのかということです。
単なるムダ遣いではないのか、他に有効な遣い道があるのではないか、どうしてもお金が余るなら株主に返すべきではないか。そういうことを、取締役会で社外取締役に指摘してもらいたいわけです。
また「創業○周年記念事業」などと称して立派な冊子を作ったり、何らかのイベントを企画したりといったこともよくあります。
はたして、それらを行うことで企業価値の向上にどれだけ貢献するのか、株価の向上に寄与するのか。経営者の自己満足のための散財にならないよう、厳しくチェックしてもらう必要があります。
M&Aにおいても細かく確認するのが役割
あるいはM&Aを画策している場合は、いくらぐらいまで出すつもりなのか、それによって買収先企業の価値をどうやって高めていくのか、そもそも買っていいのか。
常勤取締役はM&Aの実行そのものが目的となってしまっていることがあるので、細かく確認するのも社外取締役の仕事でしょう。
昨今であれば、買収費用として例えばEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益。企業の稼ぐ力を表す指標で、一般的には営業利益+減価償却費)の何倍まで出せるかを、あらかじめ決めておくのもよくある考え方です。大企業なら、もちろん専門チームがこれらの数字を精査した上で、最終的にトップが決断することになると思います。
ところが中小企業の場合、そこまでの体制を整えられないので、プロセスが曖昧になることがあります。我々の投資先企業でも、かつてM&Aで傘下に入れた企業の価値が3年ほどで大幅に下がり、減損処理したケースがありました。
「この会社はどういう基準で買ったのですか」
と我々がお尋ねすると、社長も担当役員も下を向いたまま。EBITDAなども含め、特に何も検討せずに買ってしまったようです。こういう事態を事前に食い止めるのも、社外取締役に期待されるところです。
以上が平時における社外取締役の仕事だとすれば、もう1つ大事なのが有事における仕事です。
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