一見すると正しい判断のようにも思えますが、やはり社外取締役としてはおかしい。一般株主の利益を代表して意見を述べ、行動する人でなければならないはずです。
このような重要な案件においてこそ、常勤取締役から独立した立場で是非を判断するのが本来の役割です。棄権されては社外取締役の意味がありません。
我々がよく知っている事例は投資先企業などに限られますが、同じような社外取締役は日本の上場企業に少なからずおられる気がします。官庁から天下っている例も多いし、旧財閥系では同じグループ企業から恒常的に送り込まれている例もあります。このようなケースでは、指名委員会もかぎりなく形骸化しているのではないかと懸念しています。
こういう慣習を看過すべきではありません。
社外取締役の立場や役割を再確認し、東証の「独立性基準」を社外取締役にふさわしい属性に改める必要があると思います。それが一般株主の意向を経営陣に届ける強力な手段であり、ひいては経営に常に緊張をもたらすことにもなるはずです。
社外取締役に期待される2つの役割
ではふだん、社外取締役にはどのような仕事があるか、あまりよく知られていないかもしれません。
上場企業の取締役会の開催は、原則として月に1回程度です。多い会社では年18回という例がありました。その間にやるべきことは、実はさほどありません。
社内の個々の事業については、常勤の役員が担うはずです。社外取締役も詳しいに越したことはないでしょうが、その分野の専門家である必要はありません。我々株主としても、事業に関わって企業価値を向上させてほしいとまでは期待していないのです。
ただし、よく「大所高所から経営を監視します」とか「すべての関係者から独立した観点で意見を述べます」などと言われる社外取締役の方がいますが、それは違います。
株主総会を通じて株主に選ばれている以上、前述のとおり、少数株主の立場で意見を述べることが大前提。つまり、「独立性」とは、一般株主と利益相反が生じないことなのです。
これを踏まえると、社外取締役としてやるべきことは大きく2つに集約されます。1つは平時において、企業価値の毀損を防ぐこと。
例えば、不動産を購入して本社ビルを建てるという構想が持ち上がったとします。しかしそれが、誰の得になるのか。経営者は気持ちいいかもしれませんが、多くの従業員にとって関心は薄いでしょう。
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