金融庁と東京証券取引所は2015年に「コーポレートガバナンス・コード」を導入しました。ここでは「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義されています。
私としては、この定義について多少の不満はありますが、コードとして定められているさまざまな原則は高く評価しています。
その内容について、ここで1つずつ説明はしませんが、日本の上場企業をあるべき姿に近づける規範を示した意義は大きいと思います。2018年の改訂では「資本コスト」の概念が導入され、2021年にはESG(環境・社会・ガバナンス)に関するコードも追加されました。
「ESG投資」という言葉があるように、もともとESGは投資家目線の概念でした。
企業が中長期的に成長を持続するには、これらの要素が不可欠というわけです。いつしか社会全体も、企業に対してこれらを期待するようになりました。時代の流れとして当然で、特に上場企業にとってはアピールの場でもあります。
ESGへの取り組みを“偽装”する企業
ところが、なかにはESGへの取り組みを“偽装”する企業も散見されます。
とりわけ多いのが環境分野で、特に配慮したわけではないのに商品パッケージや広告に自然の画像や映像を使ったり、環境に負荷をかけていることを隠すために環境保全活動を強調したり等々が典型例。これを「グリーンウォッシュ」といいます。
それだけではありません。
私の知るかぎり、実はガバナンスについても“偽装”している例は少なくないのです。「コーポレートガバナンス・コード」に準拠しているように見せながらそうではなかったり、情報開示が適切ではなかったり。私はこれを「ガバナンスウォッシュ」と呼んでいます。
その実例は非常に多くあります。
株主総会の前に株主に配布される「招集通知」によく掲載される「スキル・マトリックス」もその1つ。
株主総会では、取締役の選任決議が行われます。その判断の参考のために、候補者がそれぞれどういう「スキル」を持っているかを一覧にしたものです。項目としては「企業経営」「商品開発」「マーケティング」「財務会計」「法務」などが一般的です。
しかし私の経験からいえば、これはかなりいい加減です。
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