モノ言う株主・丸木氏が語る「日本企業の経営問題」 見過ごされる「ガバナンスウォッシュ」とは

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まず「企業経営」について、まるで無条件のように会長、社長はスキルを持っていることになっています。ROE(株主資本利益率)が非常に低く、PBR(株価純資産倍率)1倍を下回る株価を放置している社長が、経営にスキルがあると言われても困惑するばかりです。

なかには官庁や日銀から天下ったばかりの候補者もいて、いつの間に民間企業の経営に熟達したのかは、まったく謎です。

あるいは資本コストの計算方法もよくわかっていないのに「財務会計」が得意とか、前年に不祥事を起こしながら「コンプライアンス(法令遵守)」に強い等々の取締役が、それぞれ再任を求めていたりするわけです。

いずれにせよあまり深く考えることなく、それらしく脚色しているようにしか見えません。

もちろんこれは、企業側の問題です。しかし同時に、その姿勢を見過ごしたり見逃したりする運用会社などの株主の問題でもあります。

本来なら、こういう部分にこそ質問を投げかけたり、異議を唱えたりしなければならないはずです。適任とは言えない経営陣によって業績が低迷したり、株価が低く評価されたりして不利益を被るのは他ならぬ自分自身、ひいては自分たちの顧客である投資家だからです。

株の持ち合い「政策保有株」は一利なし

コーポレートガバナンス・コードでも指摘され、解消が求められてきたものの1つが政策保有株。お互いに政策保有株主であれば、いわゆる株の持ち合いです。以前よりずいぶん減ったことはたしかですが、今なお消えていません。

私は、日本企業のガバナンス改善の必須項目として、なお岩盤のように残っている慣行だと思っています。

あるいは、「取引先持株会」というものも現存しています。文字どおり、ある会社の複数の取引先が同社の株を毎月少しずつ無条件に買い増していく会です。

まったく時代に逆行しているようですが、取引関係がある以上、なかなか「抜ける」とは言い出しにくいのでしょう。いかにも日本的な組織だと思います。

たしかに株を持ち合っていれば、お互いに安定株主になり、株主総会で会社提案の議案には必ず賛成するし、有事には買収者から経営者を守る方向で議決権を行使してもらえるでしょう。

買収を恐れる経営者は防衛策を講ずるだけではなく、政策保有株主を増やそうとし、その見返りに自社でも取引先の株を持ち合うわけです。

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