アスペルギルスは、部屋の中にもフワフワと漂う普通のカビで、人間が少々吸いこんでも通常は免疫系で排除できる。一般的にアスペルギルス症は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のように、別の病気で肺の機能が破壊されたり、免疫系の働きが低下していると起こりやすい。ところが、環境状態によっては、ほとんど健康な人でもアスペルギルス症になることがある。
アスペルギルス症を放置すると重篤化も
「アスペルギルス症には、さまざまなパターンがあります。肺や免疫機能の落ちた人の場合は、急な発熱や止まらない咳が典型的な症状になりますが、比較的健康な人では、咳や痰の症状はあっても、一見普通の風邪のような状態で、時折、微熱が生じるといったパターンがあります。これからの時期、風邪の症状が長引くときには、カビが原因の病気も疑う必要があるのです」(亀井教授)。
単なるアレルギー症状とは異なり、アスペルギルス症では、炎症によって肺を破壊してカビが増殖を繰り返し、進行すると全身にまで症状が及ぶことがある。また、ハトのフンで増殖するクリプトコッカスというカビに、健康な人が感染して、肺炎から脳炎へと重い症状に至ることもあるそうだ。
ゆえに「長引く不調」を、ただ「風邪が長引いている」などと侮ってはいけない。
ただし、カビによる肺炎などの真菌症を診断できる医療機関は少ないのが現状だ。真菌症には抗生物質は効かないため、抗真菌薬で適切に治療を受けることが重要なのだが、そのさじ加減を上手くできる医師の数も足りていない。つまり、発症すると治療がやっかいな病気で、それゆえに予防が大切となる。
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