娘が振り返る「山田太一さんが家庭で見せた素顔」 両親の思い出が主題の映画「異人たち」が公開

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――確かに助監督や制作部は撮影現場をスムーズに進めるために効率を求めがちだと思うので、動きに効率を求めるのは助監督や制作部経験者に多い思考だと思います。

のんびりしているように思われがちですが、無駄を省きたいというところがありました。スマホがない時代でも、効率的に。この駅ではここで降りるとすぐに階段だとかいうのを頭に入れてましたから。

わたしが子どもを連れて車で実家へ帰るときは、あと5分くらいでつくよと連絡を入れると、着いたときには車庫のシャッターを開けて、満面の笑みで迎えてくれる。

母も「子どもには気が長い」と言ってましたけど、わたしたちを寝かしつけるときにも創作の話をしてくれていました。落語の登場人物に子どもを入れたり、もうとにかく面白くてゲラゲラ笑って。もう1回って言うと、いいよって。自分が子育てをしてみて、あれはすごかったな、よく何度も話してくれたなと思います。

子どもとの時間を大切にしていた

頑張っていたのもあると思いますし、気が長いというのもあるけれども、もうこの時間は子どもにあげようっていう意識で集中して向き合ってくれて、パッと仕事に行くみたいな。だからこっちも不満が残らないんですよね。

こちらから話しかけても、ちゃんと本や新聞を閉じてこちらの話を聞いてくれる。ながらで何かをするというのがなくて。子どもとの時間を大事にしてくれてるなと思ったのを覚えてます。

――子どもだからということではなく、ひとりの人間として向き合おうとしてくれた。

そうですね。誠実であろうとしてくれたんだなと思います。自分が間違えたときはちゃんと謝ってくれました。こないだは俺が悪かったとか。それはすごく影響されています。

自分も子どもに対してはそうありたいなと思いますし。ただわたしはすごく父に甘いんです。姉と弟からだと、父はまた違ったふうに見えていたかもしれないですけどね(笑)。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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