川勝知事で話題「細川ガラシャ」壮絶な辞世の句 辞任の心情を問われて引用し、注目が集まる

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「父上もすっかり元気になって、これからきっとまた新しい人生が始まるはずだわ」

しかし、その翌年に、すべての状況は一変することになる。

天正10年6月2日(1582年6月21日)、明智光秀が突如、主君を裏切って、本能寺にいる織田信長を討った。「本能寺の変」である。

「まさか、父上が信長様を……!」

玉は細川家の居城である宮津城で、父が謀反を起こしたという知らせを聞いたが、しばらくは受け入れられずにいた。

一体、何が起きているのか。到底、わかるはずもないが、安住の地が足元から崩れ去る不安はすぐに襲ってきた。玉は「裏切り者の娘」になったのだ。

行く末が不安な中、夫からの衝撃の一言

今、頼れるのは、ただ一人、夫の忠興だけ。行く末の不安をかき消すかのように、まだ2歳の忠隆をぎゅっと抱き締めて、つぶやいた。

「大丈夫、忠興様はきっと私を見捨てはしないはず……」

細川家と明智家はこれまでともに手を取り、戦乱の世をわたってきた。どんな事態になろうとも、その結びつきは揺るぎないと玉は信じて疑わなかったのである。

ところが、目の前に現れた忠興が放った言葉は、玉のそんな希望を無残に打ち砕くものだった。

「そなたには今すぐ、味土野(みどの)の別宅に行ってもらうことになった。時間がない。準備せよ」

「……私を離縁するということですか」

 玉がすがるような眼で訴えると、忠興は目を背けて、無言でその場を立ち去った。それがすべての答えだった。

「これが現実に起きていることとは……」

まるで罪人のように粗末な籠に乗せられた玉。待女2人を連れて、人気のほとんどない山深い味土野へと幽閉されることとなったのである。

「子供たちと会いたい」

 毎夜、月を見上げる玉。ある日、さらにどん底に叩き落す知らせが届いた。

「坂本城が落城……姉も弟たちもみんな炎のなかで自害……」

すでに父は討たれている。玉は、まさにすべてを失ったことになる。ただ一人行方知らずの妹の鈴をのぞけば、みないなくなってしまった。

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