川勝知事で話題「細川ガラシャ」壮絶な辞世の句 辞任の心情を問われて引用し、注目が集まる
「父上が来たわ!」
玉がそう声を挙げると、ほかの3姉妹、倫、菊、鈴も目を輝かせた。特に倫は夫の秀光、菊は夫の光忠が、光秀の隊にいたため、少し照れたような笑みを浮かべた。
光秀の表情には、この大イベントの準備をやり切ったという自信がみなぎっているかのようだった。
「父上、ここまでの努力が報われましたね」
玉は感慨深い思いに駆られながら、我が夫が現れるのを心待ちにした。玉の夫は細川忠興。その父は細川藤孝で、光秀と同じく信長がその能力を高く評価する家臣だった。
信長は、光秀と藤孝という優秀な家臣同士を結婚させることで、織田軍団をさらに強化しようと考えていたのだろう。
5番目にこのイベントの主役である信長が嫡男の信忠とともに現れると、その壮麗さに観覧席にどよめきが走った。そして、信長の隊にいたのが、鈴の夫である信澄と、玉の夫、忠興である。
「忠興様……!」
忠興の堂々たる風格を目の当たりにして、玉の胸に誇らしい気持ちが沸き上がってきた。
つくづく人生はわからないものだ、と、玉はパレードを観ながら、しみじみと考えていた。
夫の細川忠興もまた出世頭だった
玉が最愛の母を亡くしたのは、忠興との縁組みが決まったすぐあとのことだった。いつも仲の良い両親を観ていた玉。憧れの夫婦とは、2人のようなことだといつも密かに思っていた。
それだけに母を失ったときのショックは計り知れないものだったが、玉を心配させたのは、元気のない父の姿だ。父の寂しさを思えば、いつまでも下を向いてはいられない。
そう自分を奮い立たせていると、不思議なことに人生は好転し始めた。玉はこのパレードの2年前には、忠興との間に男の子を産んでいる。名は忠隆という。
ちょうどその頃、丹波・丹後を平定した褒美として、信長から光秀に丹波一国を、藤孝と忠興に丹後一国を与えられたばかりだった。玉からすれば、父と夫がともに出世を果たしたことになる。
それだけに玉の出産は、12万石の大名となった細川家に、さらに大きな喜びをもたらすことになった。このパレードもまるで、自分の幸福を祝福してくれているかのように思えてくるほどだ。玉は、まさに幸福のまっただなかにいたのである。
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