認知症の親を看取った2人の「後悔と幸せな最期」 稲垣えみ子×中村在宅医の「老いを生きる戦略」

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中村:患者さんもそういうことに気づくことができるか、気づくことができないかで、違うのかもしれません。

稲垣:近所の桜でも、病室の窓から見る空でもいい。「きれい」だって気づけるかだと思います。

中村:気づきって大切ですね。自分が楽しめる方法を自分で編みだそうという方向に向かっていけばいいのですね。

「ピンピンコロリ」は“悪魔の発想”?

稲垣:誰しもいつかは死にます。だから人生の下り坂に入ったら、そんな身近な気づきを増やしていけるように生きる戦略を変えることは、すごく自然なことなんじゃないでしょうか。

それができずに、いつまでも「上り続けることがいいんだ」って思っていると、人生の後半戦は敗北の連続になってしまう。だから、上り続けてパタンと倒れる「ピンピンコロリ」を望む人が多いですけど、それって悪魔の発想じゃないかと。

中村:悪魔の発想? 確かにそうですね。医師からすると、ピンピンコロリは突然死です。

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稲垣:突然死そのものが問題というよりも、ピンピンコロリを目指すことで、下り坂の価値に気づく努力を放棄してしまって、結局人生の大事な締めくくりの時間を寂しいものにしてしまうことが本当にもったいないと思うんですよね。

中村:まずはそこの意識から変えていく必要がありますね。人生の折り返し以降は、新たな戦略のもと、しっかり下りながら新しい価値観を作っていく。それこそが幸せな最期を迎えるために必要なことなんでしょうね。

(司会・構成/岩下明日香)

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稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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