認知症の親を看取った2人の「後悔と幸せな最期」 稲垣えみ子×中村在宅医の「老いを生きる戦略」

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中村:親には親の価値観があるように、患者さんにも患者さんの価値観がある。

稲垣:そう思います。中村先生が医師として、目の前にいる患者さんに何かチップスを与えたいというお気持ちはすごくわかります。ただ、いくら自分で体感した幸せでも、それがその人にとっての幸せなのかわからないと思うんです。

中村:さまざまな患者さんの最期に立ち会ってきたからこそ、ちょっとした視点の変化で、よりいい時間になるかもしれない!と思ってしまうのですが、その人にはその人の歴史があるから、立ち入れられないところもありますよね。そういう意味では、私がしようとしていたことって、おせっかいですね。

中村医師の「おせっかい」は悪くない?(写真:今井康一撮影)

おせっかいって悪いことじゃない

稲垣:でも、おせっかいって悪いことじゃないです。他人に関わることって素晴らしいと思うんですよ。今、家に何もない暮らしをしているので、近所の小さな小売店や銭湯に通っていると自然にお年寄りの友達が増えて、いろんな話を「うんうん」とうなずいて聞いているんですけど、だいたい同じ話です(笑)。これが親だったらイライラするんだけど。

中村:わかります!

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稲垣:で、そんな大したことをしてるわけじゃないんですけど、お年寄りって、話をウンウンと聞いてくれる人がいるだけで喜んでくれるんですよね。だから私、これも1つの親孝行だと思っているんですね。親の話はちゃんと聞けなくても、他人の親の話はちゃんと聞ける。そうやって親孝行をみんなで回していったらいいんじゃないかって。

中村:確かに、親の話を聞いていると、段々イライラしてきて、「だからね」と遮りたくなりますからね。

稲垣:そういえば、私の父にも「親孝行」してくれる人がいるんです。かかりつけのお医者さん。最近もの忘れがひどい、自分も認知症が進んできたんじゃないって不安になっていたら、「そういうふうに言っている人はまだまだ大丈夫ですよ」と言われたのがすごくうれしかったみたいで、その話を30回くらい私にしています。

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